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毎日新聞No.275 【平成20年11月21日発行】

空き家バンクの未来

  今、全国の「空き家バンク」が苦戦している。この事業は、数年前から地方の市町村で行われているもので、地方に増えてきている空き家の情報を市町村などが取りまとめ、田舎暮らしを希望している都会の方に紹介するというものである。同様の事業として、田舎暮らし体験事業やクラインガルテン、二地域居住推進事業などが上げられる。

  行政としては、定住促進により人口減少を少しでも食い止めることや、空き家を埋めることによる防災・防犯の効果、更には、移住者との新たな交流による地域の活性化など、さまざまな効果を期待し、空き家バンク事業を推進している。
  県内でも、この言葉を聞くようになって数年経つ。しかし現在、全国の市町村と同様に、実施している多くの自治体では思うような成果が挙げられていない。移住を希望する方はあるものの、肝心の物件の登録、つまり空き家の確保が思うように進んでいないのだ。この理由には、故郷の家を手放すことへの抵抗感や、故郷の土地・建物を売ってしまうことへの「地域に対する負い目」のようなもの挙げられる。また地域としては、新たな住民に対して、コミュニティーへの参加などに不安があるのであろう。
  まだまだ新しい事業であるため、認知度の向上はもちろんであるが、こういった住民の意識を変え、物件提供への抵抗感をなくすこと、地域の受入体制を整備することが、事業推進のために必要なのである。

  県内の6市で構成される空き家バンク制度調査研究会が、12月1日、南アルプス市において制度の普及促進を目的にしたシンポジウムを開催する。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの理事長でもある作家の立松和平氏の公演や、実際に空き家バンクを利用した移住者の話などを通して、地元山梨のすばらしさを再認識していただき、地域資源を活用した空き家バンク事業について、地域住民の方々のご理解とご協力をいただくことを目的にしている。1人でも多くの住民の皆様にご参加いただき、空き家バンクを利用した地域の活性化についての理解を深めるとともに、地域でできることは何かを考えるきっかけにしていただきたい。

(山梨総合研究所 研究員 中沢 敏)


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