毎日の検診が大切


毎日新聞No.8 【平成10年7月30日発行】

~便利さと危険は隣り合わせ~

 ここ数年のコンピュータ、特にパソコン環境の変化は著しく、利用人口の 増大、インターネットの普及は爆発的なものだった。しかし、その陰にはコン ピュータウイルス(コンピュータに感染してデータを消失、改ざんする病原菌 のようなもの)という避けられない重大な問題も現れた。事実、昨年来「マク ロウイルス(感染力の強いウイルス)」なるものを中心に世界的規模で被害が 増大し、便利さと危険は隣り合わせという状況にある。

 1986年ごろに最初のウイルスが発見され、以後繁殖を繰り返している そうだが、意外なことにコンピュータウイルスの出所は、欧米や日本のように コンピュータが広く普及した国でなく、むしろハイテク産業の分野で後れをとっ ている国々が多いというのは興味深い。それらの国ではコンピュータ産業の立ち 遅れから、コンピュータを勉強し、優秀な技術を身につけたものの活躍する場が ないため、自分の技術の高さをアピールしたいがためにウイルスを作るといわれ ている。また、自分でウイルスを作っておきながら、そのワクチンソフト(ウイ ルスで破壊された部分を修復するソフトウエア)を開発し、大金を得ている構図 もあるようだ。

 最近は、生活の至る所にコンピュータが浸透し、情報交換をスムーズに行お うとするネットワークの構築も盛んに行われている。だが、このネットワークも ウイルスに感染するとあまりにもろい。自分のところが感染源で、他人の会社に まで感染すれば、損害賠償を請求されたり、また、公共施設のデータが消失した り、書き換えられてしまえば、復旧に膨大な時間やコストがかかり、それはその まま住民の生活に悪影響が及ぶ。

 先頃、マイクロソフト社から「ウインドウズ98」が発売された。

 新しいソフトウエアが開発されるとそれに対抗してまた新しいコンピュータ ウイルスが開発されるという”いたちごっこ”が続く。開発競争をただ傍観している だけの私たちパソコン利用者がなすべきことは、とりあえず、こじらせる前に毎日 のうがいと早めの検診(ワクチンソフトによるウイルスチェック)をしておくこと だろう。

(財団法人山梨総合研究所研究員・樋口真二)