我が家も「機会均等」
毎日新聞No.9 【平成10年8月6日発行】
~義母の入院機に妻の家事負担再認識~
ワールドカップ(W杯)フランス大会が終わって半月が過ぎた。40年来の 野球ファンである私も今回はリアルタイムでサッカーのだいご味を堪能した。日本 チームが帰国した日、東京の下町で一人住まいをしている義母から体調が悪いとい う連絡を受けた。都合よく、妻がその日のうちに病院に連れて行くと、病名は「帯状ほうそう」だという。驚くことに、医者から失明する恐れがあると言われ、妻はその日から義母に付き添うことになった。
家を心配する妻に、「家事全般は私に任せろ」と胸をたたいた。朝5時に起き て洗濯とそうじをし、朝食の仕度をする。子供を送り出してから早々に身仕度して 私も出かける。早めの帰宅を心がけ、途中で買い物をする。夕食をとり、風呂を掃除してわかす。奮闘するが、かなり手抜き家事である。すでに子供も大きく、近くに住む私の親も健康なので助かったが、家事、育児、介護の負担の大きさを再認識した。
「国別にみた夫の家事負担度」(平成9年度国民生活白書)によると、 「そうじ」、「洗濯」、「買い物」、「食事の仕度」、「食後の後片付け等」、 「子供の勉強の指導」、「乳幼児の世話」、「親の世話」という家事の主要8項目 についてイギリス、アメリカ、ドイツ、フランスの各国と比較すると、日本の夫の 家事負担度はすべての項目で最低とある。それも八項目中で10%以上は「子供の 勉強の指導」の17.1%だけで、あとは2.5%以下という低さである。ちなみ に「子供の勉強の指導」はイギリスが59%と高く、「食後の後片付け等」では日 本の1.8%に対し、次に低いアメリカでも14.5%もある。
来年4月から改正男女雇用機会均等法が施行される。女性の地位向上や人権尊重、差別の撤廃など、男女の個性を活かした男女共同参画社会による豊かな社会づくりをめざす。
義母は無事退院し、妻は我が家に帰って来たが、私はこれを機会に家事に参画することにする。それで妻がもっと地域や人との交流を深め、学習や休息の機会を増やせばいいと思う。
(山梨総合研究所主任研究員 向山 建生)