手腕問われる自治体


毎日新聞No.19 【平成10年10月29日発行】

~求められる工夫・実行力~

最近、「財源不足」という文字を新聞紙上などでよく見かけるようになった。法人税収入をはじめとする税収の落ち込みが財政基盤を揺るがしている。自治体にとっても厳しい時代の到来である。 さらに現代は多元的な価値の時代であり、高度に専門的な行政課題も増大している。いよいよ地方自治体の手腕が問われる時代になってきた。

 これからの地方自治体は、多種多様な住民のニーズ(要望)や利害関係の調整にどのように対応すべきかを長期的展望と責任の所在を明らかにしながら、勇気を持って取り組んでいく必要がある。そして、可能な限りの情報をすべて公開し、相互に理解を深め合うことで、意外とスムーズに解決の糸口が見出せることもあるだろう。

 また、市町村単独で業務が完了し、解決可能なものから介護保険など周辺市町村と連携しながら行わなければ解決できない事務・事業も今後、ますます増加すると思われる。

 最小の経費で最大の成果をおさめられるような経営感覚を身につけた自治体こそがこれからは生き延びていくのではないだろうか。そうでないところは「倒産」の憂き目をみることになろう。これまで以上に適正な金銭感覚が必要となる。

 東京都は、昼休みの消灯や冷房を28度に設定するなどの自助努力で電気代が数千万円も節約されたと聞く。都知事もノーネクタイで乗り切ったそうだ。聞いてみれば「なるほど」と思う反面、なぜ今まで実行できなかったのかとも感じる。

 それはともかく、今後、各自治体とも行政改革という大上段に構えた行動だけでなく、創意・工夫と実行力で、可能なことから一つひとつ変えていくことが重要である。

 これからの時代はこれまで以上に環境に負荷をかけない行動や人的、物的資源の有効活用がカギになる。社会の激しい変化に対応できるような適切な判断能力と、長期的な展望を兼ね備えた行政のプロとしての自治体職員の実行力に期待する。

(山梨総合研究所研究員・樋口真二)