地域開放で有効活用を


毎日新聞No.20 【平成10年11月5日発行】

~少子化による”余裕教室”~

1997年厚生省国民生活基礎調査概況によると、日本の1世帯平均人数は2.79人と過去最低を記録している。一方、65歳以上の高齢者がいる世帯は、全世帯の31.5%に増加し、子供(18歳未満の未婚者)のいる世帯数を初めて上回った。これは、少子高齢化、核家族化の傾向が端的に表れた結果であり、この傾向は今後も続くと見られている。

 こうした中、小中学校における余裕教室(将来とも恒久的に余裕となることが見込まれる普通教室)の活用が問題となってきた。全国の保有教室数は、50万9,318室で、うち余裕教室は5万7,197室と約11%を占めている。山梨県ではというと、保有教室3,860室、余裕教室109室(一時的余裕教室除く)で、約3%である。(97年5月1日現在)

 このため、全国の該当市町村のなかには、余裕教室活用計画などを策定し、児童生徒のための相談室や資料室、また、地域住民に生涯学習の場として開放し活用を図っているところもある。

 埼玉県川越市の霞ヶ関東小学校では、空いた教室をお年寄りのデイサービス・センターに活用しているという。この学校では、デイサービス・センターが併設されてから、児童の提案で毎月1回クラス単位でお年寄りと交流会を開いたり、運動会や音楽発表会などにもお年寄りを招いているそうである。利用者に好評であることはもちろんのこと、核家族化でお年寄りと触れ合う機会がなくなってきている子供たちも、お年寄りから暮らしや遊びを学んだり、ぬくもりを味わったりしているようだ。

 余裕教室が高齢者福祉施設として生まれ変わり、「子供たちはお年寄りに学び、お年寄りは子供たちに学ぶ」、これこそが教育ではないのだろうか。

 本県では、埋蔵文化財の展示といった郷土資料室、児童の集会場やクラブ活動、図画工作の保管といった多目的室などに利用されているが、地域に学校を開放しているところは少ない。今後、地域に開放するなど有効な活用が求められよう。

(財団法人山梨総合研究所研究員・竹野浩一)