時間かけあきらめず


毎日新聞No.21 【平成10年11月19日発行】

~環境問題 考え方の転換必要~

先月の末ごろだろうか、海外では環境を守ろうとして爆破などのテロ行為をする団体があると新聞に書いてあった。地道で平和的な活動をしているほとんどの環境保護団体にとっては迷惑な話だろう。

 確かに、環境問題には、いらいらすることが多い。
 自然を破壊することが目に見えているのに実行される公共工事、野生の生き物たちのすみかを奪う観光開発、野焼き、不法投棄など毎日のようにどこかの新聞に載っており、政府も企業も国民も本気で環境を守る気があるのかね、と思うことがしばしばである。

 しかし、環境問題については、
 (1)世界的な視野でものを見なければならない(2)何世代も後の人間たちのことも考えなければならない(3)利潤追求という企業のあり方を見直さなければならない(4)便利さの追求という生活態度を検討しなければならない

 という、人間の考え方の転換が絡むだけに時間がかかるのも事実だろう。
 (1)についてだが、オゾン層の破壊など環境問題を考えるには地球規模でものごとを考えなければならない。しかし、考えの枠が「藩」から日本へと広がったのは明治維新のころで、そのためには多くの労力が費やされた。このことを考えると、地球という枠で、人々が考えるようになるには時間がかかるのも仕方がないだろう。

 また、(2)についても、環境問題は未来との調停といわれる。自分の子供のためにはたいていのことは我慢できても、何代も後の子孫のことまで考えて、今の生活の便利さを我慢する(自家用車をなるべく使わないなど)となるとどうだろうか。

 (3)、(4)についても戦後長い間支配していた価値観である。見直しには時間がかかる。
 だからといって、変えることは不可能ではないし、変わっていかなければならない。
 だが、問題は人の心の問題である。無理に変えようとすれば、反感を買い、よけいな時間が必要となるかもしれない。

 環境問題については、あきらめず、ゆっくりゆっくり人に働きかけることも必要だろう。 

(財団法人山梨総合研究所研究員・坂村裕輔)