低料金化に期待
毎日新聞No.30 【平成11年3月4日発行】
~家電リサイクル法 2001年本格施行 企業努力で素材開発~
1998年が暮れようとしたころ、わが家のテレビが急に映らなくなった。これはどうしたことかと思いつつ、たたいたり、なだめたりしたが結局、徒労に終わった。ふと、新しいテレビで新年を迎えるのも悪くないなと思い、近所の電器店に足を運んだ。運悪く年末ということもあって人手が足りず、新しいテレビは自力で運び入れた。ここで問題が起こった。故障した古いテレビの存在である。粗大ゴミの収集日は1ヶ月後だった。あれほど活躍し、部屋の隅にではあるが大いばりで占有している四角い箱に敵意さえ持つようになった。
おりしも98年5月に特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)が成立した。3年の準備期間を経て2001年度から本格施行される。これにより家電メーカーや輸入業者はテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンについて引き取りとリサイクルが義務づけられた。現状では、この4品目で年間約1800万台の廃家電が発生しており、破砕処理の後に鉄などの回収にとどまったリサイクルが行われ、一部はそのまま埋め立てられている。この法案成立の背景にあるのは環境対策のほかに、年々増加するこれらのゴミに対する最終処分場のひっ迫にあると言われている。
本格施行後の廃家電処分までの流れとしては、消費者が小売業者に使い終わった製品を持ち込み、その際、小売業者はその後の収集・リサイクルにかかる費用を請求し、引き取った製品をさらに製造業者らに引き渡す。この際の料金は前もって公表され、各メーカーごとに個別に決定される。
通産省の試算によると消費者の負担は製品などにより異なるが、2500円から5000円ぐらいになるという。将来的にはこの4品目の他に出荷量が年々増加しているパソコンなどのOA機器も加わりますます処分場不足が身につまされてくるに違いない。
この実施までの3年の間に廃家電リサイクルを新事業として育成しようという動きがあるほか、プラスチックよりもリサイクル性に優れた素材の開発や設計段階からの軽量化、部品点数削減、鉛やフロンといった有害物質の低減、回収ルートの新設など企業レベルでの新しい取り組みがなされている。企業努力による減量化と低料金化に期待したい。
(財団法人山梨総合研究所研究員・樋口真二)