女性・市民バンク NPO拡大に期待
毎日新聞No.33 【平成11年3月25日発行】
~新しい都市型市民金融~
金融機関の貸し渋りが話題になって久しいが、海外でもアジアを中心に金詰まりは深刻である。経済混乱に苦しむタイでは、庶民が日常手元に置いておく現金を持ち寄って「基金」をこしらえ、資金が必要な人々に貸す仕組みができあがりつつあり、この活動に対して国際的なNPO(非営利組織)グループも支援に向けて動き出している。
この仕組みは、普段、会員になって手元の現金を預けておけば、お金が必要になった時に、担保不足などの理由で銀行などから融資を受けられない人も、基金から借りられるという、ある種の庶民金融である。
わが国でも、銀行から支援を受けにくいと言われる女性の事業活動を支援するために、市民グループによる会員制の金融機関が、昨年8月に設立された。「女性・市民バンク(WBC)」というこの組織は、神奈川県内女性市民グループが中心になって設立した会員制のノンバンクであり、会員から出資を募って集めたお金を、会員に限り市場金利より低い金利で融資している。
市民が日常の小口現金を持ち寄って資金の必要な人に貸す仕組みは、「無尽」、「講」などとして古くから行われてきたものであるが、組織的・法的に整備されたものが信用協同組合である。多くの信用組合が厳しい経済環境により、合併や転換、統合など、その数を減らしつつある中で、この組織は新しい都市型の市民金融システムとして注目を集めている。
このたび大手都市銀行に、巨額の公的資金が投入される。金額が大きいということは、それだけ影響を受ける人の範囲も広く、状況も深刻であるということであろうが、大手銀行では大幅なリストラは行うが、役員の賞与はむしろ増える傾向にあると聞く。
女性・市民バンクについては、元本保証の有無や出資法との関係、さらに将来的には信用組合への格上げなど、幾つかの課題もあるが、NPOの活動を拡大する手法としても期待されている。「金は天下の回りもの」とは言うが、地道にコツコツ仕事をする人のところにお金が回る、そんな仕組みがあっても良い。
(山梨総合研究所主任研究員・廣瀬久文)