日本NPO学会設立 整備促進に期待


毎日新聞No.38 【平成11年4月29日発行】

~地域政策の形成が多元化~

 昨年12月に施行された特定非営利活動促進法(NPO法)に基づいて認証を受けたNPO法人は、この4月8日現在、全国で48団体(「C’s・市民活動を支える会」調べ)になる。今年中には1,000団体から申請があると予測されている。これらNPO法人による活動は、地域の身近な課題解決を目指したものから、地球規模の活動を展開するもの、福祉や文化・芸術、環境などの社会サービスの提供に取り組むものなど、多岐にわたり、その活動は、今後ますます活発になるものと考えられる。
 こうした動きが増すことにより、NPO法人の活動と公共政策との関係はさらに強いものとなることが予想される。同時に、今後NPO法人には、公共政策との連動性から政策形成力が求められることになる。

 地域における課題は、国における諸問題と同様に、多様化と複合化が進み、特定の機関による一元的な政策形成では対応が難しくなっている。そうした時に、NPOをはじめとしたさまざまな主体が政策を提言し、実行していくことは豊かで深い地域社会を創っていくうえで大変重要なことである。

 既に、まちづくりセンターを中心として、住民の参画によるコミュニティ現場からのボトムアップ方式で政策形成を行い、事業実施している世田谷区の例や、自転車で行ける範囲で起こる身近な問題や生活実感に根ざした課題に取り組んでいるワーカーズコレクティブと呼ばれる企業組合の活動例、さらには、NPOにかかわる政策の研究やNPO活動と連動する公共政策の研究と実現を目指して設立されたNPO政策研究所の活動例など、政策形成をベースとした活動事例は多数ある。

 これからのNPO法人には、このような自立した個人、市民の集合体による政策形成に基づいた自主的・自立的な非営利活動を求めたい。

 さて、こうした活動を学際的に捉える機関として、3月20日に日本NPO学会が設立された。ここでは、NPOに関する客観的、科学的な現状分析や、社会におけるNPOの役割や制度・政策のあり方等に関する研究・教育などの進展と普及を目指している。同時に、学際的な研究・教育の場と地域の実務者との情報交換や交流を促進することを設立目的としている。行政も、企業も、住民も政策形成力を相互に高めながら、互いの政策を評価し合うような地域社会となる時代はすぐそこまできている。

 日本NPO学会における取り組みが、我が国のNPOの政策形成力向上と活動環境の整備促進につながることを期待するとともに、全国各地のシンクタンクにおいても本学会と連携し、政策評価や目標管理等に基づいた公共サービスの範囲と担い手の再検討など、地域における政策形成の多元性について調査研究を進めることを期待したい。

(山梨総合研究所主任研究員・窪田洋二)