国民健康保険制度の不思議
毎日新聞No.42 【平成11年6月10日発行】
徴収方式 一本化を検討
~被保険者すべて納付を~
自治・厚生両省が、国民健康保険の徴収方式について「税金方式」を廃止し、本来の「保険料方式」に一本化する方向で検討に入ったことが伝えられた。
国民健康保険制度は、保険の技術を用いた社会保障制度であるから、主な財源は保険料ということになる。国民健康保険法76条には、「保険者は、国民健康保険事業に要する費用にあてるため、世帯主又は組合員から保険料を徴収しなければならない」と規定されている。
しかし、同条にはただし書きが付いていて、「地方税法の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りではない」とされている。これは、市町村が地方税法によって、国民健康保険税を課した場合は、目的が重複する国民健康保険料は徴収しなくてもよいということである。
つまり、保険者である市町村は、保険料として徴収するか、税として徴収するかを選択することができるのである。(1998年現在、県内では、甲府市と道志村が保険料、他の市町村は保険税)
このように、まったく同じ目的のために2種類の徴収方式があるこの国民健康保険制度は、他の制度ではあまり例をみない。なぜ、このような税と料という2本立てになったのかだが、国民健康保険の草創期に、保険料という名目での徴収が困難だという理由からで、税金に対する人間心理を取り入れたためである。
では、ここにきて急にこの問題が浮上してきたのかと言うとそうではない。これまでにも、税金方式の導入以来、保険料方式への移行が検討されていたが、「保険制度である限り、保険料による徴収が当然である」という筋論と、「地方公共団体として運営するのであれば税として徴収するほうが、料として納めるより被保険者の義務観念が強く、収納率が上がるのではないか」という双方の意見で、実施が見送られてきた経緯があった。
たしかに、税か料かについてはさまざまな意見があり、多くの市町村の実情をも加味して考えなければならない。だが、はっきりと言えることは、相互扶助という意識で被保険者全てが保険料(税)を納めて、初めて『国民皆保険』になるということだ。すべての人がこの意識を持たなければ、税か料かと言う議論よりも先に、国保制度自体が破綻してしまうだろう。
(山梨総合研究所研究員 竹野浩一)