女性プランに「魂」を
毎日新聞No.43 【平成11年6月17日発行】
~策定すれど推進できず~
普段から、「おい」ではなくて「妙子」と妻の名前を呼び、休日には誠意を込めて家族の朝食を作り、食後の後片付けをする。これが、「男女共同参画社会の実現」を研究する私独自の推進ミニプログラムである。
1975年、メキシコシティで開かれた国際会議で「人口の半数を占める女性の力が十分に活用されていない」という現実から、その年を国際婦人年と定めた。以来、5年ごとに国際女性会議が開催され、国、県、市町村においても、「男女共同参画社会の実現に向けて」の女性プラン(女性行動計画ともいう)の策定が盛んになっている。
山梨県庁内にも女性政策室が設けられ、甲府市、都留市、南部町の女性センターでは、このテーマについての学習や講演会を頻繁に開催している。県内の約20市町村でもプラン策定委員会を発足、それぞれ独自の「女性プラン」を作成した。
全国的にみて山梨県は、女性プランの策定に積極的であるが、それらの先駆的プランに行き詰まりを感じる。よくあることだが、「プラン」を策定するが、「推進」ができないのである。埼玉県内でも「女性プラン」を策定した市町村は多いが、やはり「推進」で足踏みしているという。
それはなぜかというと、女性プラン策定では男女共同参画基本法なり、国際会議の採択内容なりの高い視点(ソサエティ、行政施策体系)で学習し、その枠にはまったまま、「さて、我々は・・」に至るから、具体的な推進プログラムが見いだせないのである。つまり、プラン策定のための学習や検討の視点が違うからだと思う。
そこで私は、次のようにあるべきだと考えるので、関係者からご意見をいただきたい。(1)策定手順の最初に、男女共同参画における家庭や地区のあるべき姿を描き、検討を繰り返しながら、あるべき姿への追加・修正をおこなう。プランは、具体的な推進プログラムを盛り込んだ住民参加型行動プランであることの認識が必要で、スローガン的な表現はしない(2)男女の生物学的差と社会通念的差の合理性もみる(納得した男女の役割分担は不平等ではない)(3)男女の役割分担に複合タイプを考察、柔軟なプランとする(4)都市型女性プランと地方型女性プランの違いをみる(5)推進は行政主導型ではなく、地区活動型(家庭、地区)(6)推進に際して意識の持ち方などによってグループ分けする(理解協力グループ、推進協力グループ、推進グループ)(7)社会教育活動への応用が有効である(育成会、ボランティアなど)(8)アンケートの基礎データを使う(推進の説得材料、評価材料)(9)内容が盛りだくさんより、具体的で実効性のある推進プログラムをつくる。
策定された女性プランに、「魂」が入っていないと怒った町長さんがいた。形式的にプランを策定していたのでは、「魂」は入らない。
(山梨総合研究所主任研究員 向山 建生)