CATVやインターネットで


毎日新聞No.49 【平成11年8月11日発行】

~コミュニティネットワーキングへ~

 「グローバル時代の日本社会」という募集論文の受賞作を読んだ。その中で筆者は、地球を一つの社会としてとらえ、地球社会を「年齢、性別、能力などが異なる人々がリスクを広く分担し、さまざまな個人の将来における不確実な部分を縮減するシステム」と位置づけている。
 すなわち、社会を諸個人の一つのセーフティネット(安全網)としてとらえ、地球全体でそのリスク分散を図りながら、地球という自然条件の制約のもとで発展を目指すという考えである。それは、経済・金融のグローバル化によってもたらされるような勝者と敗者が生まれる概念ではなく、対立する二者を調停し、互いにグローバルな連携と活動が営まれる仕組みとしての「地球市民社会」の実現を目指すものである。
このような社会は、インターネットをはじめとするさまざまなメディアの上で地域や国家の枠を飛び越えて、個人間の連携・連帯によって構築されるネットワークによるコミュニティによって急速に形成されていくものと考えられる。

 現在、我が国におけるインターネットの利用者は1,700万人と推計(昨年度末、郵政省調べ)されている。家庭での利用者が人口の3割を占めるようになっている北米や北欧と比べると、まだ少ない数字ではあるが、ここ数年の利用者数の増大は目を見張るものがある。

 既に北米、北欧の諸国では、情報を発信しているさまざまな人々がインターネット上で出会い、インタラクティブな情報交換を行い、情報を共有化し、連携化することにより、「コミュニティネットワーキング」と呼ばれる新しいコミュニティの形成が盛んとなっている。また、こうした仕組みを利用して、福祉を含むさまざまな社会情報システムへの応用も試みられている。

 では、我が国においてはどうであろうか。現在、コミュニティネットワーキングへの取り組みは、八ヶ岳周辺町村により始まろうとしている。ここでは、オープンプラットホームという新しい社会情報システム基盤をCATV(有線テレビ放送)やインターネットなどのメディア上に整備し、自治体間の情報の共有化と業務の標準化・連結化を図ったり、民間情報と行政情報、さらには個人による情報の相互乗り入れなどが可能な情報システムの構築を目指している。

 スタートしたばかりの取り組みではあるが、今後、こうした試みが広がりを見せ、地域における新たな連携と協働が生まれ、さらにはネットワークが地球全体に広がるものと考えられる。加えて、このような『地域発のコミュニティ』がインターネット上に多数成立し、広がりをもち、さらにはコミュニティ間の連帯が創られることにより、地球を一つの社会としてとらえるようになり、連携と協働の「地球市民社会」が築かれるものと期待する。

(山梨総合研究所主任研究員・窪田洋二)