危機的状況の医療保険制度


毎日新聞No.52 【平成11年9月8日発行】

~住民基本台帳法の改正~

 先の国会で住民基本台帳法の一部改正案が可決し、8月18日に公布された。
 内容としては、今まである住民票の13の記載事項のうちの氏名、住所、性別、生年月日の4つの情報と住民コードについてすべての市町村や都道府県を結ぶコンピュータ・ネットワークを3年以内に整備し、全国どこでも本人であることを確認できるようにするものである。

 通勤・通学など市町村や都道府県の区域を越えて生活をしている現代社会では、本人であるという確認がどこの市町村でもできるシステムが便利であり、地方の自治体(都道府県や市町村)としても相互に広域連携していくという時代の流れとも合致している。また、高度情報化は急速に進展しており、全国の市町村の住民基本台帳の99%(個人割合)以上が電算化されていることも、この背景にある。

 導入にともない住民の負担が軽減され、行政サービスが向上するという住民側のメリットと行政改革に役立つという行政側のメリットが挙げられている。具体的には住民票がどの市町村でももらえ、引っ越しなど転入・転出の手続きが転入時の1回で済むようになる。また、自治体側としても窓口業務量の軽減や住民基本台帳事務の効率化、そして大災害時のデータのバックアップ、将来の電子申請やワンストップサービスへの活用をも視野に入れた発展性がそのメリットとして挙げられる。電子申請に関しては、住民の申請に基づく住民基本台帳カード(ICカード)を導入し、全国どこの市町村でも自分の住民票の写しが簡単にとれ、ゆくゆくは福祉関連や施設利用などさまざまな機能を付加したカードの発行も数年のうちに実現する見通しである。

 一方、全国である1人の情報を共有できてしまうというリスクに対しては、その人の居住関係を確認するための利用に限定している点と民間部門での利用を禁止している点を挙げているが、個人データが安易に漏えいしたり、プライバシーがあらわにされたりという最近の状況を見るといささか不安が募る。さらに、国民総背番号制への移行も懸念されている。

 運用については、情報を扱う人の責任に負うところが大きいが、技術的にも情報の暗号化等プライバシー保護には十分な措置を講じることを期待するとともに、さらなる個人情報保護の法整備が急務であろう。

(財団法人山梨総合研究所研究員・樋口真二)