2000円札発行の効果は?


毎日新聞No.61 【平成11年12月22日発行】

~早期普及には懸念残る~

 来年沖縄サミットが開催される前に、42年ぶりの新額面紙幣2000円札が発行される。小渕改造内閣の目玉として実施されるようであるが、果たして私たちの生活にどのような影響が出てくるのであろうか。
 国民が一番期待しているのは、景気浮揚効果であろう。自動販売機や金融機関の現金自動受払機(ATM)などの更新投資、小売業での2000円札発行記念セールなどが考えられる。ちなみに、和光経済研究所の試算では、「新札が普及することを前提」として、約2兆円の経済効果、10万人の雇用創出が期待できるという。

 ただし、「普及」については、順調に進むか懸念が残る。その理由として、まず一つ目には、発行までの期間が短すぎ、準備が追いつかないのではないか、という点である。長期不況に動く気配が出始めたばかりの時期に、経済メリットを生まない設備投資が急速に盛り上がるであろうか。全国のATMをすべて入れ替えるとなればかなりの金額となろうが、立ち直りつつある金融機関の収益を圧迫することは必至であり、「第二の2000年問題」と指摘する声もある。

 また二つ目は、従来の10進法と違う概念の紙幣であり、支払いやお釣りでの使用に当初は戸惑いが大きいのではないか、という点である。1000円札で十分代替が可能であり、「ババ抜き」ではないが財布から優先的に抜かれる、もしくは退蔵される存在にならないだろうか。

 いずれも、時間が経過するに従い解決していこうが、新額面の紙幣を発行するのであれば以前から議論があった5万円札など高額紙幣のほうが効果は大きかったであろう。紙幣の発行枚数は、1000円札が35%、5000円札が5%、1万円札が60%と1万円札の占める割合がかなり高い。物価の上昇、経済の拡大を考えると今後も1万円札の流通量は増えてくる。インフレや偽造の心配から高額紙幣ではなく2000円札の発行に決まったとの話も聞くが、経済活動の効率化を考えると、5万円札、10万円札の登場も期待したい。

(山梨総合研究所主任研究員 村田俊也)