お土産の包装も


毎日新聞No.62 【平成12年1月19日発行】

~ゴミについて考えよう~

 アメリカから来た友人と石灯ろうを買いに行った時のことである
 石灯ろうといっても、セラミックで石灯ろう風につくられた庭の照明器具で、母親へのお土産に持って帰りたいとのことだった。そこで、電気店(「照明器具」なので、電気店で売っている)の人に、アメリカまで持って帰るので割れないように包装してほしいと頼んだところ、その店員が「これは大丈夫ですか」と聞いてきた。「これ」とは、瀬戸物やクッキーなどによく使われている、空気の入ったビニールの粒々がついた緩衝材(つい、そのビニールの粒々をつぶして時間の無駄遣いをしてしまう)である。
  なぜそんなことを聞くのかと、たずねると、以前、外国人が買い物に来て、その緩衝材を使おうとした時、その外国人から、「それは自分の国では捨てられないから困る」と言われたそうなのである。友人が「ダイジョウブ」と答えたため、店員さんは荷造りをはじめたのだが、海外旅行の際に土産物の緩衝材にまで気を配らなければならないほど、ゴミ処理について厳しい国もあるとは、ちょっとした驚きであった。

ヨーロッパの国々では、1992年にEUで「10年以内に包装廃棄物の総重量の90%を回収しなければならない」などの内容が含まれた「包装廃棄物指令」が採択されて以来、容器包装廃棄物に関するさまざまな対策や規制が行われている。 ヨーロッパだけでなく、容器包装材を含めたゴミ問題は、戦争や、人権問題など、我が国も含めた多くの国や地域で重要な問題として、真剣に取り組まれているものの一つであろう。 そのため、ゴミ問題に対して先進的に取り組んでいる、ドイツ、フランスなどには海外からの視察者がたくさん来るそうである。 共通の問題であるから、ある国の取り組みが別の国の参考になりうるのである。
目の前にあるゴミについて、どうすれば減らせるか、再利用できるか、減量化できるか、考えてみよう。ゴミ問題について考えることは多くの国の人間と問題を共有していることになるのである。

 そして、あなたの自治体でゴミの分別などゴミ処理がうまくいったなら、ある日突然、遠い国から視察に来るということもあるかもしれない。

(山梨総合研究所研究員・坂村裕輔)