行政運営に民間手法導入が盛ん


毎日新聞No.63 【平成12年1月26日発行】

~わかりやすく住民へ~

 2000年を迎え、多くの地方自治体では2000年や21世紀という節目を出発点として、まちづくりの計画である総合計画策定作業が進められています。近年は住民参加が叫ばれ、自治体内組織とともに住民会議を開催し、職業を持つ多くの住民の方が仕事が終わるやいなや地域の集会場に集まり、夜遅くまで議論を重ねている姿を見聞きする機会も増えてきました。その中での住民の声は、行政の実態をもっと分かりやすく知りたいというものです。
 そのような流れの中で地方自治体では行政運営に民間経営手法を導入する動きが活発化してきています。既に三重県の事務事業評価システム、大分県臼杵市の貸借対照表(バランスシート)の作成、千葉県白井町の自治体ISOの取得など先進的な取り組みが行われています。こうした動きは地方分権の流れの中で自治体の自立が強く求められていることも背景にありますが、とりわけ自治体の財政危機に伴う行政コスト削減の取り組みがあり、限られた財源を有効かつ効率的に活用するかが問われているからです。しかも、その先にはサービスを受ける側の住民(民間企業で言うところの株主)が大きな存在になっています。

 評価作業をおこなう場合、下水道の普及率が何%、芸術ホール入館者何人という目標を設定して、その達成度を点検し、翌年の新たな目標に向けて、事務事業の改善と戦略的要素を加味して続けられるのが一般的です。ただし、これのみだと量的に評価しているにすぎない面があるため、その修正としてサービスの質の向上を取り上げたり、住民を顧客にたとえて住民の満足度を探り、それを高めていこうという取り組みも行われてきつつあります。

 また、毎年繰り返される評価も、自治体内部だけにとどまるのではなく、その状況や結果を外部にわかりやすく公表し、理解を得るという手続きがないと役に立ちません。貸借対照表の導入などは財政面で従来の公会計ではわかりにくかった将来的なコストの把握が容易になる事で期待感が高まっています。

 民間手法の導入は望ましい事ですが、手法をやみくもに当てはめるのではなく、地域の状況や特質を加味しながら修正を図り、住民を意識したさらにわかりやすい取り組みや公表の仕方に英知を注ぐことになりそうです。

(山梨総合研究所研究員 樋口真二)