重要性増す広報紙


毎日新聞No.64 【平成12年2月9日発行】

~住民参加の基本は情報~

 地方自治は、住民の参画と共に成り立っている。住民は地方自治の主人公であり、自分たちの望むまちづくりを行政に行わせることができる権利者でもある。
 住民参加は、要望や陳情という方法もあるが、まず、「今、町や村で何が起こっているのか、今後のまちづくりにおける基本的な構想はどうなっているか」といったことに関心を持ち、情報を得ていくことからはじまるのではないだろうか。

 「情報なくして参加なし」といわれる通り、住民参画の基本は、正確な情報がきちんと用意されていて、だれもが目にすることができることである。現在、住民が行政情報を得るための有効な手段としては、情報公開制度があげられる。この制度は行政を透明にし、住民参画の行政を行う上で、大きな役割を果たすとされている。しかし、この情報公開を行うための条例は、各都道府県では制定しているものの、市町村単位では検討中という自治体が多く、実際に制度化しているところは意外に少ない。住民として知る権利も必要であるが、個人情報の8割を保有しているといわれる市町村においては情報公開を制度化する前に、個人情報の保護を優先させる仕組みを整えなければならないなど、行政情報の公開に対する慎重な検討が要求されるからである。

 このような状況の中で、住民が行政情報を得るための手段として重要な役割を担っているのが、市町村の広報紙である。かつては、行政からの”お知らせ”の意味合いが強かった広報紙であるが、住民の参画意識の高まりは、いままで以上に情報提供や提案、広聴機能を有した情報収集などを中心とした紙面づくりを求めるであろう。

 自治体は情報公開の意義や必要性を再認識し、他の自治体との比較検討や評価などを行いながら掲載内容の改善を進め、紙面づくりをしていかなければならない。一方住民においても、与えられるだけの情報から一歩踏み出し、広報紙の内容改善に具体的な提案を行うなど、情報を得るための努力が求められている。

(山梨総合研究所研究員・竹野浩一)