「山梨とアジア」研究


毎日新聞No.68 【平成12年 3月8日発行】

~地域産業を世界につなげ~

 米・ニューヨーク市のウオール街や証券取引所がニュースに頻繁に登場するわりには、国際化、国際交流、世界都市といったことを聞かなくなった。山梨で活動しているためにそういう情報が入りにくいのかと思い、東京の本屋などをのぞいてみると、このテーマの書籍はやはり目立っていない。10年ほど前の政府刊行物や一般図書にこの種の用語があふれていたのと隔世の感がある。
 たしかに、平成10(1998)年度の海外旅行者数は前年に比べて100万人も減少し、1508万人となっているし、日本に来る外国人数も10万人減少し、410万人になった。長引く不況のせいということであろう。また、最近の日本人は海外でもすっかり元気をなくしている。ほんの少し前に、地球時代を語り、日本の世界経済における役割を論じていたのがうそのようである。今は、世界の未来はアメリカが考え、アジアの未来は日本ではなく中国が支えるかのような勢いだからである。

 しかし、日本社会の底力はこんなものではないし、進められている経済社会のグローバルな展開などは後戻りしない。しかも地域の国際化、産業の国際的展開はすでに国家や国の経済システムによるものではなく、地域や個々の企業の自発的な動きが決め手となる時代が来ている。キャッチコピーが目指す状況に到達した場合には、そのコピーは陳腐になるものだが、地域の国際化はその具体例なのかもしれない。

 山梨総合研究所では山梨とアジアの関係に焦点を当てた研究を企画しつつある。県内企業などの海外依存、国際交流の現場を踏まえながら、山梨経済の海外交流のあり方を探ろうとする研究企画である。地元企業などの生の意見を聴きながら、山梨の地域と企業にとって必要な海外の情報はどんなものか、海外の地域や企業と山梨県内の地域や企業と結びつける手段、方法はどんなものか、連携しあっていこうとする国や企業などの社会制度や商習慣などを調査し、適宜提言していこうと考えている。

 想定される提言の相手先は県内の地元企業であって、山梨の経済界を元気づけ、地域に根付いた海外交流を活発にしていくことがこの研究における当面の成果イメージである。

(山梨総合研究所調査研究部長・檜槇 貢)