デジタルウェーブ
毎日新聞No.76 【平成12年 5月24日発行】
~乗るか、のまれるか~
日本で初めて、アメリカ大リーグ公式戦のオープニングゲームが行われた。5年前の1995年、単独で渡米してロサンゼルス・ドジャースに入団した野茂英雄投手は、その年に13勝6敗という快挙をみせた。以後、吉井や伊良部など、次々とメジャーでの成功をめざした投手が渡米し、その活躍がNHKのBS(放送衛星)放送で、生で見られることになった。この秋から新たなBSデジタル放送も始まる。
この5年間にインターネットも飛躍的に普及した。米国NUA社の公表によると、99年3月現在で世界のインターネット利用者数は約1億6,000万人で、その約80%は北米と欧州であるという。日本のインターネット利用者数はというと、「インターネット白書99」には99年2月現在で1,500万人とある。また、3月中旬にNTTドコモのiモード契約は500万台を突破し、高性能携帯端末の普及は、「いつでも」、「何でも」に加えて、「ドコでモ」簡単に入手できる時代をもたらした。
デジタルトレンドの初年度といわれる2000年、IT(情報技術)は驚異的な速度で企業スタイルや我々のライフスタイルを変えようとしている。中でもネット取引(Electric Commerce)は、従来の「物や情報を買う」行為に対し、デジタルITとインタラクティブなデジタル情報インフラによって画期的なマーケット改革がなされようとしている。現状におけるネット取引は、プラットフォームはパソコンが主で、インフラは一般の通信回線(一部専用線やCATV)である。パソコン出荷台数と出荷金額の伸びも驚異的だが、通産省の外郭団体である電子商取引推進協議会によると、昨年のネット取引推計額は3,360億円(不動産を含む)とあり、2006年には約20倍の6兆6,620億円(国民総消費の2.2%)に達するだろうと予測している。もはや、「高齢者などには操作が難しいからまだまだ」とか、「情報インフラが未整備だろう」とか、「決済などのセキュリティーに課題がある」とか、「法整備の必要がある」などから「我が社は、まだ大丈夫だろう・・」などと悠長に構えていてはいけない。アッと言う間にデジタルウェーブにのみ込まれてしまう。特に、地方の民間企業は、デジタルウェーブの影響が何だかよく分からないうちに、おぼれる可能性がある。
このネット取引は、本や衣料、家具や食料などの日常品にとどまらず、電化製品や車などの耐久消費材から家や不動産、犬猫、旅行や情報に至るまで、あらゆる商品がネットで購入できてしまう。それらはネット上で電子決済が行なわれ、送付すべき商品は、既に確立されている正確でかつ迅速な物流システムにて届けられる。
いやはや、大変疲れる時代になるようである。
(山梨総合研究所主任研究員・向山 建生)