有機的な関係づくりを
毎日新聞No.78 【平成12年 6月28日発行】
~アジア産業の変化、県内に影響~
通貨危機から3年が経過し、東アジア諸国は政府の危機対応策や高い貯蓄率、良質な労働力などから予想をはるかに超える回復力を見せている。まだまだ難題が山積しているとはいえ、改めて「世界の成長センター・アジア」の沸き上がるような力を感じざるをえない。
15、6世紀、文明の中心はアジアであったといわれているが、400年にわたる長い植民地支配の時代を経て、再び東アジアが世界の最重要生産拠点として生まれ変わり、中国を中心とする家電産業、台湾を中心とする情報機器産業、日本を中心とするエレクトロニクス・メカトロニクス産業といった集積や機能分担が進むことになろう。しかも、NIES、ASEAN諸国、中国、日本の域内貿易比率はすでに50%を超えている。また、海外直接投資も東アジアへの投資資金の70%以上がアジアから供給されており、アジア諸国の相互依存の関係はますます深まりつつある。
適地生産、適地調達、適地販売を基本とする国際市場において、アメリカ企業などの技術公開やOEM発注、M&Aの動きから、技術移転のスピードは速く、わが国とアジアとの関係は、モノ、カネ、ヒト、情報などあらゆる場面において技術構造に深い影響を与える基幹的な部分に踏み込んだ「連携・協働」へと向かわざるをえないだろう。
さて、本県の産業界はこの20年で産業構造を一変させている。そしてアジアの変化が直ちに本県の景況に影響するような状況であり、県内企業を存続、発展させ雇用を確保していくためにも、また産業構造の高度化を図るうえからも、アジアとの有機的な関係づくりは緊急の課題である。海外展開は「行くも地獄、残るも地獄」とよく聞くが、国際化が進み、機能分担、水平分業化という歴史の車輪をもはや後戻りさせることはできない。
山梨総研では、このほど『アジア・フォーラム21』という研究と実践を柱とする会を立ち上げた。この会は、地元企業の方々に自由に参加していただき、アジア研究者や実務家と一緒に企業が抱えている課題をテーマに研究する。また、交流会を設け個別の課題についても議論し、解決の道を探っていきたいと考えている。現在、会員を募集中である。
(山梨総合研究所専務理事 早川 源)