地域のサポーターを


毎日新聞No.84 【平成12年 9月 6日発行】

~グリーン・ツーリズムの可能性~

 「カントリー・ブーム」や「ガーデニング・ブーム」に代表されるように、近年、都市住民の間で、田舎志向や自然志向が顕著になるなかで、人々の余暇活動のあり方の一つとして「グリーン・ツーリズム」への関心が高まりつつある。
 グリーン・ツーリズムとは、日本では「農山漁村において、そこにある自然、文化、人々との交流と新たな発見を楽しむ余暇活動」と位置づけられ、農家民宿、農林漁業体験、自然学校、観光・市民農園、ふれあい交流ツアーなどの形態で、日本各地で最近、実施されてきている。
 従来型の観光が、雄大な自然環境や歴史的資源、温泉といった観光資源に依存しているのに対し、グリーン・ツーリズムでは、普通のあるがままの農村の姿が資源そのものとなる点に大きな特徴がある。また、従来型の観光が不特定多数の通過型観光客を主な対象とするのに対し、グリーン・ツーリズムでは特定の農村での継続的な体験を求める訪問者が対象となる。
 このため、グリーン・ツーリズムでは、農林漁業などの地場産業への結びつきが強く、農山漁村においては、都市住民との交流を通して、低迷する地域経済や地域コミュニティーの活性化につながることが期待される。すなわち、観光客としての都市住民が、農村での交流を通して、地域の「リピーター」となり、やがては地域の「サポーター」として、地域の抱える課題を住民と一緒になって考え、行動するという、地域活性化の担い手となりうる可能性を秘めている。
 事実、最近では、グリーン・ツーリズムの発展型として、都市住民がボランティアで棚田や里山の維持管理活動に従事するケースもみられるようになっている。
 むろん、一朝一夕には、グリーン・ツーリズムが成り立つわけではない。訪問者としての都市住民の意向やその成熟度によって大きく左右されるだろうし、何よりも受け入れ側の農山漁村の住民の意向とともに、提供すべき交流メニューやその受け入れ態勢のあり方をどうするかといった課題もある。
 しかしながら、グリーン・ツーリズムを進めていくうえでは、大上段に構える必要はないような気がする。大切なのは、「あるがままの地域の資源」にいかに気づくかであり、一人一人が「もてなしの心」をもって、いかに訪問者を迎え入れるのかが問われているのだと思う。

(山梨総合研究所主任研究員・田辺 伸一)