地方分権推進に期待


毎日新聞No.85 【平成12年10月 4日発行】

~甲府市が11月、特例市へ移行~

 函館(北海道)、盛岡(岩手県)、小田原、大和(神奈川県)、福井(福井県)、甲府(山梨県)、松本(長野県)、沼津(静岡県)、四日市(三重県)、呉(広島県)の10市は、8月30日の政令公布に伴い、2000年11月1日をもって特例市へ移行することとなった。
 特例市とは、政令指定都市や中核市に次ぐ位置づけで、人口20万人以上という要件を備えた市の申し出により、生活環境や都市計画などの権限が委譲され、その結果、地域の実情に応じたまちづくりが行えるとともに、自らの判断と責任で行政運営が実施できるようにと設けられた制度である。具体的には騒音や悪臭などの規制をはじめ都市計画や市街地再開発に関する16法律20項目の権限が委譲されることになる。
 現在の特例市対象は59市ある。中核市対象(人口30万人以上、面積100平方キロメートル以上が必要)が34市(特例市、中核市ともに95年国勢調査人口に基づく対象)であるのと比べ、対象数も多く、より市民に身近な存在の市が指定され、「地域のことは地域で考え、自らの責任において決定する」という地方分権の趣旨の浸透には有効な面がある。知名度の上昇に伴う交流人口の増加、企業立地の促進、地域経済への波及効果までもが期待できる。そして各都道府県内での中心的役割を果たし、地方分権推進の理想的なモデル都市の一形態として、他の市町村からも望ましい目標になるものと思われる。
 自治省のホームページには、特例市制度の趣旨として「地方分権推進のためには、できるだけ多くの権限を委譲することが望ましいが、市町村への権限委譲を推進する観点からは、行政ニーズが集中し、事務処理に必要とされる専門的知識・技術を備えた組織を整備することが可能と思われる市町村から、(中略)一定の人口規模を有する市からの申出に基づき指定することにより、権限をまとめて委譲する法制上の措置を講じようとするものである」と示されている。
 いわば人口20万人以上いれば「事務処理に必要とされる専門的知識・技術を備えた組織を整備することが可能」であると判断されていることがうかがえるが、重要なのは今後、この新しい制度をいかに市民サービスの向上に生かし、地域の実情に即した行政サービスを迅速かつきめ細かく実施できるかという点である。
 この制度が実を結び、地方分権推進の機運が一層促進されれば、新たな権限委譲の期待も高まり、第一次で指定されたこの10市にとっても、市民サービスの向上や地域の発展につながる21世紀に向けた大きなステップになるといえそうだ。

(山梨総合研究所研究員 樋口真二)