官民の効果的な連携を


毎日新聞No.91 【平成12年11月29日発行】

~公共事業とアウトソーシング~

 現在、多くの公共事業の見直しが迫られている。それらは、十分な住民の同意が得られていないばかりでなく、それ自体が本当に必要であるか、また、それにどの程度の費用をかけるのが適正であるかなどの検討が十分行われていないことに問題がある。その中で、以下の三つの問題点について考えてみたい。
 一つ目は、計画時における運営体制や需要などの見通しの甘さである。民間事業の場合、施設の建設費と同時に、運営にかかるコストや、何よりも施設が利用者のニーズに合っているか、事前に綿密な調査分析が行われることが常であろう。しかしながら公共施設の場合、利益をあげることが目的ではないものの、こうした調査が軽視される傾向であったことは否めない。つまり、行政の中にコスト意識が十分に浸透していないのである。その結果として、事業にかかる費用に見合うだけの便益が得られない施設が多く建ってしまうのである。
 二つ目は、計画から建設まで一貫した事業推進体制が整っていないことである。公共施設整備事業の施主は自治体であり、担当者や規模によっては検討委員会なるものを中心に計画から設計、建設、運営に向けて検討を行っていく。しかし、外部委託を受ける民間業者は、計画、設計、建設、運営と随時変わっていくことになる。こうなると、過去の検討による蓄積が、事業全体に十分生かされないということが起こる。
 三つ目は、行政の縦割りの組織構造が利用者のニーズに基づいた計画の大きな障害となっているということである。例えば、従来の庁舎の窓口業務は、行政の組織別に分けられていた。これは、住民の利用しやすさではなく行政の効率を中心としたサービス以外の何物でもない。近年、総合窓口という考え方が導入されるようになってきたが、利用者中心の施設計画と呼ぶには程遠い感がある。
 近年、こうした問題を解決し、より高い公共サービスをより安いコストで提供するために、民間のノウハウを最大限に生かすPFI手法が注目を浴びてきた。しかしながら、これは行財政改革の一手法に過ぎず、民間委託すれば公共事業の問題が解決するというほど簡単なものではない。むしろ、公共サービスを提供する自治体の姿勢自体が問われていることを忘れてはならない。その基本となるのは、行政が、計画から運営まで視野に入れた事業計画を立て、その過程で新たな意識を築いていくことである。例えば、事業は「PFIありき」で始まるのではなく、公共で行う場合に対してPFIの方が費用を低く抑えることが出来る場合、初めてその道が開かれるのである。
 また、サービスを受ける側である住民のニーズを把握しながら、より高いサービスを提供するというCS(顧客満足度)に対する意識を高めていく努力が求められる。こうした自治体の意識改革を促しながら、民間が計画の立案から運営まで一貫したマネジメントを行うPM(プロジェクト・マネジメント)も公共事業を実施するうえでの新たな一手法として検討されるべきである。
 このようにこれからの行政には、事業の実施にあたり、多様なアウトソーシングの手法のメリット、デメリットを把握し、効果的な官民の連携手法を取り入れていくのみならず、民間から得られる知識やそれによって明らかとなる住民のニーズを、積極的に今後の行財政改革に生かしていくことが求められる。

(山梨総合研究所主任研究員 佐藤 文昭)