住民主体のまちづくり


毎日新聞No.95 【平成13年 1月16日発行】

-行政が促進の仕組みを-

 21世紀が幕を開けた。地方自治体は、少子・高齢化、地球環境問題、情報技術革新等への対応を迫られており、その行政運営の在り方が大きく問われている。また、地方分権化システムへの移行のなかでは、それぞれの判断と責任で地域の経営を行うことが求められており、地方自治体を取り巻く情勢はかつてないほど厳しいものとなっている。地方自治体が新たな行政運営を進めていくためには、地域住民やNPOなどとの連携・協働が欠かせないが、その取り組みはまだ始まったばかりであるのが実情である。
こうしたなかで、住民参加を効率的、効果的に実現する方策の一つして、「アドプト・プログラム」への関心が地方自治体のなかで高まっている。「アドプト」とは「養子縁組」の意味であり、1985年、米国テキサス州運輸局が散乱ゴミ対策として始めた「アドプト・ア・ハイウェイ」が起源となっている。
 「アドプト・プログラム」では、住民団体や企業が「里親」となり、道路や河川、公園などの公的場所を「養子」として引き取り、ゴミ回収や清掃、植栽管理などの作業を自治体に代わって無償で行う。日本では98年頃から取り組みが始まった。清掃活動などのボランティアは今までも全国で行われてきてはいるが、「アドプト・プログラム」の場合、行政からの依頼という形で一定期間、団体等に管理が任され、その管理場所には、その里親の団体名が記された看板が設置されており、参加者の意欲や地域への帰属意識の向上といった波及効果が生まれている点に特徴がある。
 むろん、このような活動は、行政への住民参加といった意味においては、小さな一歩かもしれない。しかし、少なくとも住民が自ら進んで行政業務の一部を代行している点に大きな意義がある。こうした活動を通して、住民が単なる施設管理にとどまらず、施設整備そのものへの関心を高め、自らの地域を自らの手で計画し管理していくといった「住民主体のまちづくり」を実現していくことが期待される。
 そのためには、自治体側が住民参加を促進するための仕組みづくりを行うことが必要だ。積極的な情報公開とともに、住民に対する説明責任を果たしていくことが何よりも求められる。

(山梨総合研究所主任研究員・田辺伸一)