循環型社会実現始まる


毎日新聞No.96 【平成13年 1月30日発行】

~ライフスタイル見直しを~

 昨年5月、「循環型社会形成推進基本法」が成立した。
 「循環型社会」とは、まず第1にごみを出さないこと、第2に繰り返し使うこと、第3に使えないものは資源としてリサイクルすること、最後に利用できないごみは適正に処分することを基本とし、資源の消費を抑制して環境への負荷を低減した社会のことをいう。しかし、戦後の豊かな経済社会の中で育った私たちにとっては、利便性を優先させた大量生産、大量消費、大量廃棄の社会構造やライフスタイルを変えることはなかなか難しい。
 この法律の中での対象物は、「廃棄物」だけでなく「廃棄物等又は循環資源」となっている。今までの「廃棄物=ごみ」という考え方に対し、まだ使えるものは「資源」であるという考え方を取り入れた点で画期的だといえる。
 また、事業者及び国民の「排出者責任」と「拡大生産者責任」を明確に位置づけている。「排出者責任」とは、ごみを捨てる人がその適正なリサイクルやごみ処理に関する責任を負うべきであるという考え方であり、具体的には排出者がごみを捨てるときにきちんと分別することと、排出事業者がその廃棄物のリサイクルや処理を自ら行うことなどを指す。一方、「拡大生産者責任」とは、生産した製品が使われ廃棄された後においても、その製品の適正なリサイクルや処分について生産者などが一定の責任を負うという考え方だ。
 具体的には循環的な利用や適正な処理がしやすいように製品の設計段階で工夫をしたり、材質や成分を表示したり、最終的に消費者が使った後でも生産者が引取やリサイクルを実施することなどが挙げられている。この拡大生産者責任という考え方は生産者の企業努力に負う部分が大きいが、そのコストは商品価格に盛り込まれ、結果的には消費者が負担しなければならない。できるだけ価格が安く環境に配慮した商品を購入したいのであれば厳しい消費者の目とライフスタイルの見直しが必要となってくる。
 旅行などに携帯して大変便利な「使い捨てカメラ」も、使用後回収され、再製品化されるに至り、「レンズ付きフィルム」という名称が一般的となり、将来的には世の中の商品名から「使い捨て」という言葉が消えていくかもしれない。
 この循環型社会形成推進基本法と個別法の制定・整備を基礎に、今後は基本計画が策定され、我が国の循環型社会実現に向けての大きな一歩が始まっている。

(山梨総合研究所研究員・樋口真二)