豊かな少子・高齢社会
毎日新聞No.97 【平成13年 2月20日発行】
~「自分のこと」とし議論を~
新世紀を前にした昨年12月、「2000年国勢調査」の速報値が発表された。
これによると昨年10月1日時点の日本の人口は1億2691万9288人、前回調査(1995年10月)からの増加率は1.1%で、戦後最低だった前回の増加率1.6%を下回ったという。山梨県の人口は、88万8170人で、前回の調査と比べると6174人増加しており、増加率は0.7%であった。
国勢調査による山梨県の人口は、1900年の第1回調査では、約58万人であった。その後増加していったが、50年の約81万人から減少傾向となり、70年の約76万人を境に再び増加に転じ、現在まで増加傾向で推移している。
さて、新世紀を迎え、「経済のグローバル化」や「IT(情報技術)革命」、「地方分権」などのキーワードとともに時代の潮流として真っ先にあげられる言葉に「少子・高齢化」がある。
国立社会保障・人口問題研究所によると、出産年齢にある女性全体の平均出生数(合計特殊出生率)は、1.38(98年)まで下がっており、この結果日本の総人口は2007年をピークにその後減少するといわれている。同時に、第1次ベビーブームに生まれた世代(いわゆる団塊の世代)が老齢化するとともに平均寿命が延び、少子・高齢化は現実のものとしてさらにその勢いを増していく。
労働人口の減少、経済活動の減退、社会保障負担の増加、過疎の一層の進行など、少子・高齢化は往々にして将来の社会における不安材料として取り上げられることが多い。しかし一方で、人口減少は日本にとってプラス要因になるという議論もある。20世紀半ば以降急激に増加した日本の人口規模は大きすぎるという見方で、狭い国土、乏しい資源からみても、人口を減らし、さらに成熟していく日本のあり方が望ましいというものだ。また、高齢化社会の到来は、新たな経済需要や生活文化を生み出すといった意見もある。
いずれにしても、近い将来日本の人口は減少に転じ、少子・高齢化に拍車がかかることは間違いないが、私たち自身、社会現象として理解はしていても、「自分のこと」としてはあまり考えてこなかった。少子・高齢化社会がもたらすであろうさまざまな現象を洗い出し、私たちの生活に及ぼす影響についてプラス・マイナス両面から真剣な議論を行い、その対策を講ずることは、私たちが21世紀に持ち越した大きな課題である。
山梨県の人口も今のところ増え続けているが、国より数年遅れて減少に転ずるといわれている。そうしたとき、豊かに暮らすことのできる山梨県であるために、今のうちからあらゆる場面で真剣な議論を求めたい。
(山梨総合研究所研究員・小林好彦)