「異化空間」との融合


毎日新聞No.104 【平成13年 5月15日発行】

~文化を共有、都市活性化~

 都市を活性化するためには、再開発を行ったり、核となる商業施設を単に導入すればよいというのではなく、異質で新しい文化や考え方を都市の中に埋め込んだり、育てたりすることが重要だ。

  大阪市西区九条で、市民団体の「異人町会議」が大阪ドームの近隣に計画している「川口中華街」構想は、まさにそれである。ここでは、都市の活性化の源泉を施設や開発に求めるのではなく、都市を生命体としてとらえ、人の「暮らし」や人が創る「文化」に重点を置いている。
 都市にはさまざまな人々が暮らし、互いに影響し合っている。中心的な都市空間は、既に存在する施設の社会的作用や人びとの文化的作用により、輝きを増していく。しかし、輝きの源泉である創造的な営みや新しい文化との接触が絶えず起きていないと、その輝きは徐々に失われ、シャッター通りなどに代表される寂しい街へと衰退してしまう。
 世界の代表的な都市には、必ずその周縁に都市的生命力の源泉である「異化の空間」がある。
例えば、パリには芸術家の居住区であるバスティーユや、学生街のカルチェラタン、アラブ人居住区のバルベスなどがあり、ニューヨークにはアーティスト街であるソーホーやリトル・イタリーなどの多様な外国人居住区が存在する。日本では横浜の中華街、神戸の南京町や大阪市鶴橋のコリアタウンなどがそうした例である。
 こうした周縁的な空間をもつ中心的都市空間では、芸術家や外国人、学生など、都市住民から見ると異人である人たちによる「異化の作用」とせめぎ合うことにより、新しい文化や新しい活力が滾々と湧き出てくるようになる。

 全国の中心市街地の活性化が叫ばれて久しいが、そろそろ来るべき時代に向けて異化の空間の重要性を真剣にとらえるべき時であろう。日常の側にある人々に対しては「異人」として向かいつつ、都市空間の中では都市住民と日常世界を棲み分けている芸術家たちや、「日本とは何か」「日本人とは何か」といった根元的な問題を突きつけつつ日本社会の中に雑居的に暮らしている外国人たちと、中心的都市空間の共有化を具体的に考えるときがきている。

(山梨総合研究所・主任研究員 窪田洋二)