家庭や地域の支援を


毎日新聞No.106 【平成13年 6月12日発行】

~学校運営に評議員制度導入~

 現在、子供を取り巻く教育環境のあり方が大きく問われている。

核家族化や少子化、夫婦共稼ぎの一般化などを背景に、家庭教育に対する親の自覚不足、過保護や放任といった状況が、家庭における教育力の低下を招くものとなっているほか、地域社会でも、都市化の進行や地域社会の連帯感の希薄化などから、その教育力が低下している。学校現場でも、いじめや不登校の増加、学級崩壊の発生が深刻化する一方だ。
 こうした中、文部科学省では「心の教育の充実」や「現場の自主性を尊重した学校づくりの促進」などを柱とする教育改革を進めており、平成14年度から「生きる力の育成とゆとりある学校生活」を実現すべく、完全学校週5日制の実施とともに新学習指導要領が導入されることとなっている。
その実現には、学校、家庭、地域社会の連携・協力体制の強化が不可欠なことから、家庭や地域社会の意見を反映するため、昨年4月から「学校評議員制度」の導入が進められている。
 「学校評議員制度」とは、校長の推薦に基づき、教育委員会によって委員として委嘱した地域の有識者らが、学校運営に関して意見や助言を行う仕組みである。これまで、学校と家庭、地域社会とを結ぶものとしてはPTAや同窓会等があったが、この制度は、学校評議員が学校組織の一部として学校運営にかかわる。学校側は学校評議員を通して、家庭や地域社会に対する説明する責任を負う。これが制度上担保された点で、大いに意義を持つものである。
新学習指導要領では、体験的な学習や問題解決的な学習が重視されており、特に「総合的な学習の時間」の実施に際しては、家庭や地域社会の支援・協力が欠かせない。特色ある学校運営を行っていくうえでも、この制度の意味は大きい。

 本県でも、学校評議員の設置に向けた取り組みが本格化してきている。折しも、大阪でショッキングな児童殺傷事件が起きた。安全管理を徹底し、そのうえで「開かれた学校づくり」を実現するためには、学校評議員に限らず、家庭や地域社会が学校運営に積極的に参加していくことが何よりも求められる。

(山梨総合研究所・主任研究員 田辺伸一)