まずは多角的視点からの協議会設置


毎日新聞No.107 【平成13年 6月26日発行】

~住民と行政の一体感再構築の可能性も~

 自家用車などのモータリゼーションの進展により、住民の日常生活圏は、年々拡大している。買い物ひとつをとっても、地元の商店で買っていた人が、遠方でも時間を惜しまず、自分の欲しいものを求め奔走するようになってきた。このような、商店の選択のように自治体の行政サービスについても選別される地域間競争の時代が到来している。地域や市町村においても、自己決定、自己責任の原則が強く求められ、従来の体制から脱するための制度や意識の改革に取り組む必要が生じており、自治体としても勝ち残るための方策を懸命に模索しなければならない状況となっている。
 その選択肢の中には市町村合併もあり、一般に、「住民に最も身近な地方公共団体である市町村には、地域の総合的な行政主体として、格段に高まる自立性を発揮しつつ、分権型社会における新たな役割を担うことができるよう体質の強化を図ることが求められている」と、その必要性が述べられる。
  また、それを推進する視点もいくつかあり、権限が中央から地方へ委譲されることにより増大する事務事業への対応能力が求められる点や少子高齢化により産業等の停滞への懸念や極めて厳しい財政状況に対処するという点、また、多種多様な住民ニーズに対応しなければならないという点などが挙げられる。
 市町村合併に関しては、そこで生活をする住民の総意が最優先で尊重されなければならないのが大原則である。しかし、自治体側でも将来のまちづくりを見据える中で、財政的な課題や存続に関わる重要な問題があるならば、アカウンタビリティ(説明責任)を果たす過程で、合併を選択する必要性も住民に強力に発信する必要がある。
 また、地域の均衡ある発展を目指す地方交付税制度(自治体の財政格差を調整するために国税の一定割合を自治体に配分する仕組み)についても、見直しの気運が高まっている現状では、市町村合併という「究極の行政改革」を「手段」として行使することも住民の権利として存在する。将来のまちづくりを考えたとき、何の議論もなく先送りしてしまうことが一番の問題であり、協議会等の設置を通じて多角的な議論のもとに、合併の是非をも含めたテーブルにつくことが最低限、必要ではないだろうか。
 基礎自治体とは、住民に最も身近で密接な関係を有する市町村のことであるが、合併を機に住民の生活圏と行政区画とが一致し、基礎自治体と呼ぶにふさわしい住民と行政の一体感が再構築される可能性もある。

  国などからの財政支援の優遇措置を受けられる合併特例法の期限も平成17年3月末と、もう間近に迫っている。 

(財団法人山梨総合研究所 研究員 樋口真二)