本物の行政サービスをして!
毎日新聞No.109 【平成13年 8月10日発行】
またまた外務省職員の不正が露見した。業者と結託した水増し請求が慣習的に行われていた感がある。いつまでも矛盾を正せない行政(システム)だから、これからも不正は続くと思われる。私はかつて二度、総理府の国政モニターになった。大量の人と金を投入する選挙制度の改善案や、毎年期末になると恒例的に行われる道路工事の廃止案や、過密な学校教育のカリキュラムに対する改革案など色々と提言したが、一向に改善される兆しがない。そう感じているのは私だけなのであろうか。昨今も次のような矛盾を感じ続けているが、あたなたは?
矛盾その1:大阪教育大学付属池田小学校で8名の小学生を殺害し、現行犯逮捕された加害者の精神鑑定に2カ月もかかると聞いて矛盾を感じた。本人は精神異常者を装って殺害を計画し、それを実行したのである。自供もしている。殺害現場にいた子どもたちや親が受けた心の傷は深く、メンタルケアが必要と言われているが、一方で加害者の顔が頻繁に新聞やテレビニュースで報道されたのでは、メンタルケアにならないと思う。私なら耐えられない。平素から国内の裁判は長すぎると思っているし、凶悪犯罪を起こした加害者の人権を過剰に尊重することや、国費を使った精神鑑定や、短い服役期間など、どうも日本の法制度に矛盾を感じてしまう。
矛盾その2:平成17年3月31日までの時限法として市町村合併特例法が施行された。総務省は7月18日、市町村合併に向けて複数の市町村が設置した研究会などの設置状況調査の結果を発表した。それによると、6月末現在で、設置予定も含めると全国で243組織が合併に関する調査・研究を行い、全国3,224の市町村数の約4割に当たる1,247団体が参加しているという。特例法の行使期間内に合併すれば特典を受けられるので、山梨県内でもにわかに活発になった。そもそも市町村が再編を余儀なくされた背景には、より効率的な行政システムを目指すためという見解もあるが、本筋は国や地方公共団体が財政難に陥り、国をあげての財政改革の必要性から合併するのだと思っている。ゆえに行政から住民に、「過剰な施設建設や基盤整備等々で財政難を招いた」と釈明してから、合併による財政再建を図ることも行政サービスだと思うが、釈明を言わずに特典(えさ)につられた合併推進は矛盾を感じてしまう。
矛盾その3:行政は住民にサービスを提供するため、その財源を住民から様々な「税」として徴収している。住民、固定資産、消費、軽自動車、不動産取得・譲渡etc。先般、私の居住地区で下水道工事の説明会があった。その席で役場職員から、「河川の汚濁・悪臭に対する環境問題に対処するため、下水道工事を実施する」と聞いた。環境への取り組みは社会貢献なので、この段階で住民に反論はなかった。続いて、「よって、宅地面積に応じた受益者負担をお願いしたい」と言ったので、すぐに多くの反論が出た。住民の意見は、「なぜ宅地面積比例なのか?」、「単価の根拠は何か?」、「なぜ、行政サービスでできないのか?」というもので、役場がその質問に、「条例で決まったことなので」と回答したので住民が、「勝手に決めるな」と反論し、また役場が、「決めたのは、みなさんに選出された議員さんです」ときたので、やや会場の雰囲気が悪くなった。「これだけ税金を払っているのに、なぜ、受益者負担なのか?」という住民の素朴な質問に行政は答えられない。
これでは行政と住民のパートナーシップは確立できない。ちなみに宅地内工事は3年以内に各自の負担で行うのである。我が家も財政改革しなければ・・・
(山梨総合研究所 主任研究員 向山 建生)