「木の国サイト」を山梨の家づくりの拠点に


毎日新聞No.111 【平成13年 9月18日発行】

 ”文明の前には森林があり、文明の後には砂漠が残る”といわれる。山梨は県土の78%が森林という全国でも有数の森林県である。しかし、県史をひもといてみると濫伐や盗伐の結果、明治40年には山が荒れ大水害を起こしている。

 さて、戦後植林された県内の人工林はまもなく本格的な伐採期を迎え県産材の供給力は飛躍的に増大する。しかし、安い価格の外材に押され、加えて過疎化と高齢化がすすみ間伐や枝下ろし、下草刈りができないまま放置されている山が増えている。さらに、立木が相続税の対象資産であることから山以外に所得が無ければ山を維持できないこともあって山は荒れつつある。 こうした中で、総事業費21億円余りをかけて県産材供給中央拠点「木の国サイト」がこのほど白根町にオープンした。県産材を販売する木材製品流通センターのほかに建築家北川原温氏の設計による間伐材を使った面格子構造のモデルハウスや情報館、プレカット加工場、集成材加工場、乾燥施設などが整備されている。これに合わせて県では、一般個人住宅(新築)を対象に柱など骨組みの70%以上に県産材を使うことを条件に建築費の一定割合を補助する県産材需要拡大支援制度をスタートさせている。県産材需要を喚起し流通を促進することは森林保全のうえからも重要な施策であることはいうまでもない。しかし、果たして素材としての県産材を売ろうとするだけで新たな需要を生み出すことができるだろうか。三州瓦で有名な『三州足助屋敷』の試みは有名だが、昔、下山大工の名は信州辺りまでとどろいていたようだ。地域には地域の歴史に磨き抜かれた知恵、歳月の篩に生き残ってきた技があるはずである。下山大工や左官の技などについて改めて見直すべきではないだろうか。

  加賀美の瓦、市川や中富の和紙、郡内の内装材など地域の産業を組み合わせ地域全体で付加価値を生み出す地域経営の仕組みやソーラー発電など新しい住まいの技術や発想を取り入れ洗練させ”山梨の家”の形を創りだしたい。この「木の国サイト」を経済的な面だけではなく環境や文化的な面から森林の保全と活用、風土に根差した住生活の在り方などについて提案していく拠点としたいものである。

 (山梨総合研究所 専務理事 早川源)