「激しいコスト競争下にある進出企業群 ―中国、深セン・東莞地区」


毎日新聞No.112 【平成13年10月 9日発行】

 中国の直接投資受入れ額は、99年に79年の改革・開放政策導入以来、始めて前年を下回った。その後、中国のWTO加盟交渉が進み、国内での規制緩和や市場開放の進展への期待が高まったことから、2000年後半以降、拡大基調にある。01年上期の直接投資受入れ額は、実行ベースで前年同期比20.5%増の207億米ドルに達している。

 中国の主要省・市の中で、最大規模の直接投資受入れ先となっているのが、香港に隣接する広東省である。中国の直接投資受入れ額(実行ベース)に占めるシェアは29%に上る(99年)。同州では香港、台湾、日本、欧米などの企業の進出により、特に、電子・電機産業が発展している。珠江デルタ地帯に、改革・開放後、最初に経済特区が設置された深センをはじめ、東莞、広州、珠海などの都市が位置し、巨大な産業集積が形成されており、さらに拡大を続ける勢いである。

 これらの都市のなかでは、深センにおける日系の複写機メーカ―及びその関連部品メーカー、東莞における台湾系を中心に日系を加えたPC関連の組立・部品メーカ―の集積が際立っている。

 こうした深セン・東莞地区においては、進出部品メーカーを中心に、激しいコスト競争が繰り広げられている。短期間内の納品や品質確保は当然のことで、組立メーカーとしては、少しでも安い部品メーカーから調達することが一般化している。昨日まで取引していた部品メーカーを突然、変更することも度々見られる。この傾向は米国系のパソコンメーカーなどで特に強いといわれている。また、素材に関する基準が日本国内より緩和されている。輸送コストを抑えるためもあり、現地で入手できるものを使うというように、一定の品質確保を前提に、コスト重視の動きが強い。さらに、進出部品メーカーは新しい製品の開発を、母国ではなく、納品先のある深セン・東莞地区で行う動きも活発化している。

 競争は個々の企業にとっては、きついものに違いないが、結果的に企業の体力強化、ひいては同地区の産業集積の質的充実につながる。日本国内にいる企業にとって、中国の深セン・東莞のような地域は、いよいよ手強い存在である。日本国内で何をするかを考える上で、深セン・東莞地区の最新状況を、じっくり研究するのも必要であろう。

(財団法人山梨総合研究所 調査研究部長 波木井昇)