見直そう県産材


毎日新聞No.113 【平成13年10月30日発行】

 言うまでもなく、山梨は森林資源が豊富な県であります。国土の67%が森林であるのに対して山梨は78%を森林が占めています。今後、多くの木材資源の収穫が見込まれる中で、山梨県は県産材の普及促進に向けた様々な施策を行っています。しかしながら、県産材に対する県民の意識は、決して高いとは言えないのが現実ではないでしょうか。

 それはなぜでしょうか?原因のひとつに、市場経済があることは事実でしょう。例えば、木材需要の多くを占める住宅建築において、消費者はよほどこだわりや信念がない限り、品質が同じであれば価格が安い材料を選択しますし、住宅メーカーや工務店も消費者のニーズに応えるためには価格の安い外材を使うことになるでしょう。結果として価格競争力のない国産材の需要が減り林業は衰退していくと、森林の近くに立地していた製材工場も、海外からの原木を入荷し生産を続けることで生き残りを図ろうとするでしょう。事実、県内では外材から多くの製材が生産され、それがまた県外へと出荷されているという現象がみられます。こうした木材流通構造の変化が、県産材をさらに消費者から遠いものとしてしまっているといえます。
 しかしこうした状況には、単に価格の問題ではなく消費者の住まい方に対する意識が関係しているといえるかもしれません。山梨県は木造住宅への需要が多く、平成11年度における木造住宅率の全国平均が46%であるのに対して、 県内の住宅着工戸数である8,200戸の64%が木造住宅となっています。しかし建て方については、伝統的な在来工法(軸組工法)に対して、近年ツーバイフォー工法と呼ばれる北米生まれの工法が普及してきており、その材料のほとんどが北米から輸入されているとみられています。県内においても、平成元年の新設ツーバイフォー住宅のシェアがわずか3.6%であったのに対して、平成11年には全体の12%、戸数にして1,000戸弱まで市場を拡大しています。確かに気密性の高いこの工法が地域の気候に適しているかもしれませんし、洋風のデザインの住宅を好む消費者のニーズに合っているかもしれません。こうした「住まい(方)の多様化」の一言で片づけられている現象が、消費者と県産材との溝をさらに広げているのでしょう。仮に多様性を日本独自の「文化」と呼ぶならば、それが今日の住宅建築とその集合としての「多様性のある」町並みに表れているといえるでしょう。

  住む人、そして訪れる人にとって心地よい、魅力ある景観を創造していくためには、新たな住文化づくりを目指した議論が必要でしょう。また県産材の普及についても、単に経済活動としてではなく文化という視点から捉えていくことが求められ、それが地域産業の付加価値を高めていくことにつながっていくことが期待されます。

(山梨総合研究所 主任研究員 佐藤文昭)