「総合型地域スポーツクラブ」の普及を


毎日新聞No.118 【平成13年12月27日発行】

~県内初・韮崎市で発足~

  21世紀は「人間がより人間らしく生きること」が問われる時代と言われている。

 戦後、経済性や効率性を重視してきた我が国は、急激な成長を遂げ経済大国となったが、社会生活や文化など精神的な面での豊かさ・あたたかさが失われかけているのではないだろうか。「会社・仕事中心」の生活ではなく、人生をもっとエンジョイするべきである。家庭があり、仕事があり、趣味がある、そして、その中で心の豊かさ・あたたかさを発見、追求するような生活を送りたいものである。
 そこで、スポーツをすることをおすすめしたい。体を動かし、大声を出して一汗かけば、ストレスも吹っ飛んでしまう。また、スポーツは人を感動させる力を持っているし、子供たちには連帯感や協調性、いたわりや助け合いの精神を教えるいい場ともなり得る。心の豊かさ・あたたかさにも十分触れ合える。
 我が国においては、週1回以上、何らかのスポーツを実施する人の割合は約35%で、50%を超えるヨーロッパ諸国に比べて低い。
 また、地域の小学校のグラウンドに出かけても、更衣室さえもなく、外で着替えることは日常茶飯事である。立派な野球場・サッカー場は日本のあちこちにできたが、日常的にスポーツに親しむ環境整備は、まだまだ不十分なのではないか。
 文部科学省では、平成12年9月に「スポーツ振興基本計画」を策定して生涯スポーツ社会の実現に乗り出した。その要点は、成人の週1回以上のスポーツ実施率が50%となることを目標にしていて、その中で、平成22年度までに全国の市町村に少なくとも一つは総合型地域スポーツクラブを育成することを掲げている。
 少子・高齢社会の進展、地域コミュニティーの希薄化が進む中、新しい形態の「総合型地域スポーツクラブ」へ寄せる期待は高い。平成11年にウルグアイで開催された体育・スポーツ担当大臣等国際会議で採択された『ブンダデルエステ宣言』の中では、「身体活動に対する1ドルの投資は、医療コスト3.2ドルの削減につながる」と述べられている。

 本県においても、韮崎市が先日「総合型地域スポーツクラブ」を県内で初めて発足させた。山梨におけるスポーツ全体の底上げの第1歩と言えよう。先陣を切る苦労は多いと思うが、今後の活動に対して陰ながらエールを贈りたい。

(山梨総合研究所・主任研究員 田辺 満)