完全5日制で変わる教育


毎日新聞No.125 【平成14年 4月 9日発行】

~親、学校、社会が協力を~

 この4月施行の新学習指導要領により、公立学校での完全学校五日制がスタートした。私が学生であるならば手放しで喜んだかもしれないが、近い将来親となる私にとって教育について考える良い機会になった。
 新学習指導要領は、教科内容を削除して総合的な学習の時間をつくり、自分で課題を見つけ、自ら学び、行動し、解決する能力を育てるという内容であるが、その一方で、学力が低下するとの危機感を抱く傾向もある。事実、この2月に実施された文部科学省の調査では、私立の小中高校の45%は完全五日制を実施しないという結果だった。この結果は、受験をにらむ私立学校において、完全五日制が学力低下を引き起こすという危機感の現われではないだろうか。

  一概にどちらの選択が正しいか判断することは難しいが、私はどちらかと言えば新学習指導要領に賛成している。確かに学力低下という心配はあるが、それ以上に「考えること」を重要と思っているからである。「なぜ」「どうして」と思うことを出発点に、自ら考え、結論を出していくには時間と労力を必要とする。しかし、その結果得られる達成感と自信は、将来の自分を築いていく。その際大人が子供達に「考える」きっかけを与え、導いてあげる必要があり、学校や親また社会がその環境をつくる必要があるであろう。
その環境づくりの一環として、県内でも完全五日制の受け皿づくりが進められている。例えば、科学館や美術館、文学館、考古博物館などの県立施設では、この4月から土曜日は小中高校生に無料開放する。このように社会がつくった機会に対して、親はそれとなく子供を誘導し、子供の意識啓発を促すことが必要であろう。

 一方、学校では完全五日制により、土曜日の分だけ学校から教育の場が切り離される形になったわけであるが、教育に対する責任が切り離されたわけではない。最近、公立の小中学校を選ぶことのできる「学校選択制」を導入する自治体が増えてきている。この学校選択制は、特色ある学校づくりを促すことがねらいであるが、学校の意識改革を迫ることもそのねらいとしている。この学校選択制に関しては賛否両論あるだろうが、この制度の存在が学校が「受け」の体制から「攻め」の体制に変わるきっかけになり、「攻め」の体制をつくることによって教育の質が向上し、結果として今まで以上の学校教育が実施されることを期待している。
新学習指導要領をきっかけに学校教育の一層の充実が期待されるが、教育というものは、親・学校・社会が協力して行わなければならないものであることは確かである。

(山梨総合研究所・研究員 岡田実)