「W杯経験 次に生かせ」
毎日新聞No.126 【平成14年 4月23日発行】
~問われる自治体の役割~
サッカーワールドカップ(W杯)出場のカメルーンのベースキャンプ地が、富士吉田市と河口湖町に決まった。人類の4人にひとりがテレビ中継などを通じて、同じ瞬間に同じプレーを見て、同じように歓声を上げると言われている、世界中で他に類のないスポーツの祭典の一翼を担うわけだ。
富士北麓地域へのキャンプ地誘致については、すでに、このコラムで何回か取り上げてきたが、このキャンプ受け入れの意義として、スポーツを通じた地域活性化の展開が考えられるであろう。
とかくキャンプ受け入れに対しては、その効果が重要視されるが、一番大事なことは、このイベントを一時的なものだけに終わらせてはいけないということである。日本の地方自治体は概して外から企業やイベントなど何らかのものを誘致することに激しい意欲を燃やす。誘致に成功さえすれば地域が活性化すると短絡的に考えがちだからである。確かに、まちづくりを自力でコツコツ続けるよりも、外から何かを誘致した方が手っ取り早く楽かもしれない。しかし、誘致という手段を目的にしてしまってはいけない。明確な誘致のビジョンを掲げ、誘致を活性化のスタートとして捉え継続性を持たせなければ、その場限りの出来事で終わってしまう危険性がある。
元々、富士北麓地域は四季を通じて、気候・景観・ある程度の競技施設などスポーツをするには適した環境が整っているように思われる。スポーツを通じての集客交流産業の展開には適した場所であると言えよう。その展開を進めるためには、今回のキャンプ地誘致を成功させ、そのノウハウを次に生かして、あらゆるスポーツのキャンプ地としての地位を確立させ、人やものの交流を興していくことが大切となってくる。今回のキャンプにおいては、選手に最良のコンディションで試合に臨んでもらえるよう準備に最善を尽くし、選手・関係者が帰国しても富士北麓地域を懐かしく思い出してくれ、リピーターになってもらえるよう準備を整えて対応し、もてなすことがその後の地域活性化に続かせるために重要となってくるのではないか。ワールドカップ効果に期待するのは、それからでも遅くはない。そこからが本当の国際交流の始まりと考えるべきであろう。
開催時だけでなく、将来を見通した長期的な構想を打ち出し、富士北麓地域をスポーツを通じた地域活性化に繋げるにはどうしたらいいのか。そのために今やらなければならないことは何なのか。それらを見据え、また、ワールドカップに出場するカメルーンのベースキャンプ地であるという実績と知名度および準備・応対・もてなしのノウハウ活用して、富士北麓地域が、サッカーだけにとどまらずオリンピック選手やプロスポーツ選手のトレーニング場所や合宿地として成長し、集客交流産業が繁栄していくことを期待している。
(山梨総合研究所・研究員 田辺 満)