受け入れ態勢整備の継続を


毎日新聞No.133 【平成14年 7月30日発行】

~外国人誘客PR、W杯が効果~

  1ヶ月間にわたって日本、韓国が熱狂したサッカーのワールドカップ(W杯)が終わった。この間、世界中の国々から大勢の外国人が日本を訪れたと思うが、日本の印象はどうだっただろうか。普段は外国人旅行客の国内での訪問先は、東京、大阪が非常に多く、地方への訪問は少ないのだが、今回のW杯では、試合のあったスタジアムの他にも全国各地でキャンプが行われたので、地方を訪れた外国人も多かったのではないかと予想される。地方の外国人観光客の誘客PRには効果があったのではないかと思う。

 現在、日本の外国人旅行客の受入れ状況を見ると、世界で36位と低位にあり、1位のフランス(7550万人)の1/16にすぎない。日本人の海外旅行者数は、米国の同時多発テロの影響で一時減少したものの、2001年は1621万人に上っている。これに対し外国人の訪日旅行者数は、過去最高であるものの、約1/4の477万人にとどまっているのが現状である。観光は世界各国の国内総生産(GDP)の10%を占めると推計されており、今後も増え続けると予測されている。観光産業ばかりか経済全般にも大きな影響を与える存在になってきているわけだが、2001年の日本の国際旅行収支は約2兆8285億円の赤字となっている。こうした状況にあって、政府は、外国人観光客の誘客施策として「新ウエルカムプラン21」を策定した。このプランは地方圏への誘客を主眼として2007年には800万人に増やすことを目標としている。地方を重視しているのは、今後、外国人観光客を増やすには国際的にはまだよく知られていない地方の魅力を活かす必要があるからであろう。
 山梨県に目を向けると、外国人旅行者が県内を訪問する割合は、東京に隣接し富士山という観光資源があることから全国の中でも比較的高くなっている。誘客施策としては、1998年に神奈川・山梨・静岡県で構成する「富士箱根伊豆国際観光テーマ地区」が指定され、観光ルートの設定や案内設備の整備などが行われている。また、民間では、アジア圏の外国人観光客をターゲットに徹底した経費削減でニーズに合う低価格を実現したホテルを開業するといった取り組みも見られる。
山梨県に限ったことではないが、外国人観光客受入れの阻害要因として、魅力ある景観の不足、外国語が通じない、物価が高い、交通機関の使い難さなど受入れ態勢の不十分さが挙げられる。解決に時間やコストのかかる問題もあるが、W杯終了後も旅行者の立場を考えた態勢の整備を継続していく必要がある。

 外国人観光客にとって魅力ある観光地になることは、単に外国人の誘客促進にとどまるばかりでなく、地域の伝統文化の再生や景観の保護など観光全般にもたらす効果が大きいと考えられる。自然という観光資源を持つ山梨県が世界から認められる観光地となることを期待したい。  

(山梨総合研究所・主任研究員 一條 卓)