成熟した社会の構築を


毎日新聞No.134 【平成14年 8月 6日発行】

~超高齢社会のインパクト~

  先日山梨県より発表された、「平成14年度山梨県高齢者福祉基礎調査」によると、平成14年4月1日時点での本県の高齢化率はついに20%を超え、人口の5人にひとりが高齢者(65歳以上)であることが明らかになった。

 県内で最も高齢化が進行している早川町では46.8%と、住民の半数近くが高齢者であるという状況にある。
国立社会保障人口問題研究所の推計によると、わが国の人口は2007年(平成19年)頃から減少に転じるが、高齢化率はその後も上昇を続け、2050年には、国民のほぼ3人にひとりが高齢者となると予測されている。
また、高齢化のスピードも、高齢化率が7%から14%になるまでの期間(倍加年数)について、イギリスで47年間、スゥエーデンで85年間、フランスでは115年かかっているのに対し、わが国はわずか24年で倍に達するなど、急速な高齢化が進行している。
これほど早急に、しかも人口の三分の一が高齢者になるといった社会は、世界中のいずれの国も経験したことのない社会であり、今後日本がどのような高齢社会を形成していくかは、パイロットケースとして世界中の注目を集めている。
高齢化の進行は、社会のあらゆる分野にインパクトを与える。
ひとつには福祉の問題である。現在では約2千2百万人の高齢者を、約8千6百万人の生産年齢人口で支えている。つまり4人でひとりのお年寄りを支えている計算になる。
これが、2030年には2人でひとりを支えなくてはならない状況となるのである。
このことは、医療保険や介護保険、年金などの公的社会保障に影響を与えることはもちろんのこと、社会基盤を整備すべき税収も減少するので、最低限必要な公共的投資さえもできなくなることにもつながる。
 また、経済や文化にも大きな影響を与える。従来のようなモータリゼーションを前提としたライフスタイルと、それに基づいたマーケットの形成は、シルバー向けのそれに変換を余儀なくされ、豊かな壮年時代を経験している高齢者は、従来とは全く違った新しい消費文化を創造してゆくかも知れない。

 こうした社会環境の大きな変換期を、幸か不幸か現在のような低迷した経済状況の中で迎えなくてはならないわが国は、その行く末を、とてもネガティブに考えてしまいがちではあるが、本当の意味での成熟した社会を築く上で、非常に大切な時に来ているのではないだろうか。

NO134-1県内の高齢化比率は、全国に比べ3年ほど進んでいる
=2002年度高齢者福祉基礎調査結果から。 かっこ内の数値は推計値

(山梨総合研究所・主任研究員 広瀬 信吾)