家庭の資源消費削減を
毎日新聞No.135 【平成14年 8月27日発行】
~日常生活の環境負荷過大~
地球温暖化、土壌汚染、ヒートアイランド、排気ガス規制、再生可能な新エネルギーの開発、不法投棄など環境関連のトピックを日常見聞きする機会が近年急増している。自然、資源、空気、水、土など我々を取り巻く全ての地球環境はさまざまな恩恵を我々に授けてくれる。と同時に我々からの負荷も受けている。つまり、我々は地球規模の環境破壊がもたらす逃れようのない深刻な諸問題に直面し、我々の日常生活が地球環境に与えた過大な負荷が、我々自身の健康や生命に直接悪影響を及ぼすのだという事実を思い知らされたのである。
◎ 目をそらしてはいけない
なぜ、我々は「自分自身の日常生活が地球の許容量(石油、石炭、天然ガスなどエネルギー資源の可採年数や水、空気、植物、土壌、生態系の持つ汚染浄化能力)を超えている」ことを「知らなかった」のか。なぜ、今日までそれを「知らずに」来たのか。単に面倒くさかっただけなのであろうか。そうではない。「知りたくない」からである。より厳密に言えば、「自分の日常生活が地球環境に過大な負荷を与えている。自分は地球環境問題の単なる被害者ではなく、加害者でもある。」ことを「知らずにいたい」と思っていることを「知りたくない」からである。この場合、「知らなかった」という状態は単なる知識の欠如でも怠惰の結果でもない。「知らずにいたい」という、ひたむきな努力の結果だといえる。目をそらす努力をしなければ、これまで慣れ親しんだ便利だが環境負荷の大きい日常生活を変えざるを得なくなるからである。
◎削減に取り組むべき
我々は空気や水を汚したり、資源を使いすぎたりした。しかし、緑を増やして空気をきれいにし、汚染物質をできるだけ出さないように工夫することもできるはずである。リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)やグリーン購入は大切である。しかし、より重要なのはリデュース(削減)である。まずは身近なムダ・ムラ、例えば、家庭の電力消費全体の9.4%ともいわれる待機時の消費電力、家庭から出るゴミの重さの35.7%を占める食べ残し、容積の8.5%を占める包装紙や袋、使い捨て製品の購入などをなくしていこう。
最初は窮屈に感じるかもしれない。しかし、こうした一つひとつの行動は「知らずにいたい」ために目をそらし続ける無駄な努力から我々自身を解き放ってくれるはずである。素直な心と強い心で自分らしく伸びやかに環境負荷を減らしていこう。
VTR、給湯器、エアコン、FAX機能付電話、パソコン、ファンヒーター、温水洗浄便座、自動車など個々の製品の省エネ設計はかなり進んでいる。しかし、一つひとつは省エネでも普及台数が多くなれば、日本全体のエネルギー消費量は増加していく。
(山梨総合研究所・主任研究員 新井 純)