製品開発力 支援を


毎日新聞No.138 【平成14年10月 1日発行】

~メーカー海外移転 厳しい下請け受注~

 最近、大手都市銀行の上海支店幹部から聞いたところによると、上海やその周辺地域での生産開始のための準備調査を目的とする、日本企業関係者の同支店への訪問件数が、過去1年間で格段に増えたため、支店側はその応対で非常に多忙となっており、特に最近は規模の比較的小さな企業の訪問が、多くなっているとのことである。昨年11月の中国のWTO(世界貿易機関)加盟が、企業規模を問わず、日本企業の中国進出を促進していることはいうまでもない。

 中国・東南アジアなど海外に進出した日本の自動車やエレクトロニクス関連をはじめとする様々な業種の大手組立てメーカーは、現地生産に際し、部品コスト削減のため、部品を日本の下請け企業から輸入するのではなく、出来るだけ現地地場企業または現地進出の日本の部品メーカーから調達するようにしているが、最近、こうした海外進出組立てメーカーの現地調達の動きが特に強まっている。完成品の販売競争が激しくなっているため、部品コストを一層削減する必要があること、地場部品メーカーの技術レベルが相当に向上していることなどが背景にある。
現状、海外で満足のいく部品の調達が出来ないなど何らかの理由により、国内で組立てを行っている大手組立てメーカーといえども、一旦、海外に進出し組立てを開始すると、部品の現地調達を一気に進める可能性がある。
日本の下請け企業の多くは、中小企業であり、資金、人材などの制約から、組立てメーカーの海外展開に伴って、海外に進出するだけの余裕がなく、国内にとどまらざるを得ないところもある。今後は、下請け企業の間で、海外生産を活用し成長を目指すところと、国内にとどまるところとに、色分けが鮮明になってくるのではないか。
県内の下請け企業を見ると、既に海外生産で実績を上げている企業は、これまでのノウハウの蓄積もあって、今後の海外展開にも非常に前向きであるように見受けられる。新たな進出先のカントリーリスクが通常より高い場合、工場建物などを賃貸し、投資金額を圧縮するなど、リスクに応じた海外展開を進めている。
国内にとどまる下請け企業は、親企業からの発注が次第に減っていくおそれがあり、従来の部品生産のウェートが低下するので、替わりに、独自に成品開発(最終製品)に取り組んでいく必要がある。

 既に、危機感を持って、製品開発に積極的に取り組んでいる下請け企業もあるが、こうした下請け企業の中長期的な発展を確保していくことは、雇用などの面からも、地域経済にとって重要である。一般的に、製品開発は下請け企業には、不慣れ、不得手な分野であると思われるので、この面での外部からの支援を強化していく必要があろう。

(山梨総合研究所 調査研究部長 波木井 昇)