広がる路上喫煙規制


毎日新聞No.140 【平成14年10月29日発行】

~「マナー向上」時代の流れ~

 私は愛煙家である。寝起きの一服、食後の一服、風呂上りの一服は欠かしたことがない。こんなことを言うと何か自慢しているように聞こえるかもしれないが、要はタバコ中毒なのである。タバコは「百害あって一利なし」と言われ、自分でも確かにそうかもしれないと感じるのだが、そう簡単にやめることができないのである。

 タバコを手放せない私であるが、これだけは守ろうと誓っている喫煙マナーがある。それは、幼児の近くで喫煙しないことである。タバコは、自分以外に周囲の人にも悪影響を及ぼす、ということを知らないわけではないが、タバコをやめられない私にとって、最低限のマナーとして守っていることである。
 喫煙マナーといえば、この10月より千代田区で「路上禁煙条例」がスタートした。秋葉原、お茶の水、有楽町駅周辺など七地域を、路上や歩行中の喫煙を禁止する地域に指定するものである。実際に過料を科すのは11月からであるが、喫煙者にとってはつらい条例である。喫煙場所が規制されていく中で、屋外は自由に喫煙できる所と思っていたのは私だけではないだろう。こんな考えも通らない時代になってきているのである。
千代田区のように路上での喫煙を禁止する動きは、全国的な広がりを見せており、既に横浜市や神戸市では路上での喫煙を制限する条例を制定しており、北海道や福岡市でも同様な条例を制定する動きがある。また、民主党では歩行中喫煙規制法案(仮称)の制定に向けて動いているところである。
確かに、タバコは生活必需品でないだけに、タバコを吸う人は吸わない人のことを考え、喫煙マナーを守る必要がある。タバコに関するマナーでは、喫煙ということだけでなく、未成年にはタバコを売らないというマナーも徹底する必要がある。これに関していえば、タバコや酒の販売に関して年齢確認を義務付けるという法律改正や、年齢識別を必要とする自動販売機の導入など、官民一体となった動きが始まっている。

 厚生省の国民栄養調査によれば、成人喫煙率は長期的に見れば減少傾向にあるものの、平成11年で26.2%となっており、依然として成人の約四分の一が喫煙者ということである。「百害あって一利なし」のタバコは、喫煙者にとってみれば一時の清涼剤になるかもしれないが、嫌煙者にとってみれば間違いなく「百害あって一利なし」のものであるということを、喫煙者は再確認しなければならない。

(山梨総合研究所 研究員 岡田 実)