身近な取り組みから


毎日新聞No.144 【平成14年12月10日発行】

~地球全体の環境保護~

 わが国は、水道の水をそのまま飲むことのできる、世界でも数少ない国のひとつであり、また多様な植相を持つ森林など、世界でも有数な豊かな自然を持つ国です。

 日本の自然の特色は、その驚くべき再生力にあります。世界のほとんどの地域では、破壊された自然は容易には元に戻りません。たとえば、先進国の住宅やパルプ生産のために、アマゾン川流域などでは、年間に本州の約半分の面積にあたる熱帯雨林が伐採されていますが、熱帯雨林ではいったん伐採されるともとの森林に戻るまで日本の数(十)倍の時間がかかります。簡単に元に戻らないから、環境保護に危機感を持って取り組んでいるのです。
日本は自然の治癒力が優れているため、そのありがたさがなかなか実感できないでいます。しかし、狭い国土に1億2千万人の人口を有し、世界有数の産業力を持ち、物質的な分野において世界でも最も豊かな国のひとつであるわが国は、地球に対してとても負荷をかけている国でもあります。 地球温暖化や酸性雨、オゾン層の破壊、化学物質による汚染などといった人為的な原因による環境破壊は、地球に住むすべての生態系に深刻な影響を与えています。
レイチェル・カーソンが「沈黙の春」により化学物質による環境汚染に警鐘を鳴らしてから、すでに40年が経っています。しかしながら、今もなお環境ホルモンなどの新たな有害物質が発見されているのが現状です。また地球温暖化により海面が上昇し、国土が消滅する危機を迎えている南太平洋の島嶼国もあります。このままでは、こうした国だけでなく地球全体がクライシス(危機的状況)を迎えるであろうことは、今や人類普遍の共通認識であるといえます。
環境は、人間の全ての経済活動に影響を受けます。たしかにこれまでの物質的に豊かな生活を、急に不便なものに変えていくことは、抵抗が有るかも知れません。しかし誰かがやってくれるだろうといったことでは、すでに解決できない状況に来ています。

 ひとりひとりが、地球全体のことをマクロ(巨視的)な視点からとらえ、身近な生活から、たとえばゴミを減らすこと、エネルギーを節約すること、缶やビンをリサイクルにまわすこと、洋服や本などをリユースすること、野焼きをしないことなど、こうしたミクロ(微視的)な取り組みを積み重ねていくことが、地球を守ることにつながっていきます。

(山梨総合研究所 主任研究員 広瀬 信吾)