最小経費で最大効果を


毎日新聞No.146 【平成15年 2月25日発行】

~放課後児童クラブへの自治体関与~

 放課後児童クラブは、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校低学年児童に対し、放課後に様々な施設を利用して適切な遊びや生活の場を与え、その健全な育成を図る事業で、「児童クラブ」「学童クラブ」「学童保育所」等の呼称がある。

 以下、山梨県児童家庭課「平成14年放課後児童クラブの一覧」、厚生労働省「平成13年地域児童福祉事業等調査の概要」から放課後児童クラブの状況を取り上げ、市町村が設置運営する放課後児童クラブの今後の方向について考えてみたい。
 昭和50年に全国1,782箇所あった放課後児童クラブは年々増加を続け、平成9年に9,143箇所になり、同13年には12,058箇所に達している。平成9年児童福祉法改正において放課後児童健全育成事業として位置付けられ、児童館のほか学校の余裕教室等を活用できるようになったこと、さらに要件を備えている場合は国庫補助の対象になったこと等から、山梨県においても取り組みが本格化し、平成9年の52箇所(登録児童数1,499人)が、同14年には129箇所(登録児童数4,257人)と約2.5倍になっている。
 運営主体をみると、山梨県では市町村92%、社会福祉法人等6%、父母会2%とほとんどが公営であるが、全国では市町村47%、社会福祉法人等19%、運営委員会20%、父母会10%と比較的運営委員会や父母会が運営する割合が高く、住民の自治意識の高さをうかがうことができる。
実施場所をみると、山梨県では未利用の公的施設を活用しているほか、児童館を新設するケースが多く、全国では学校の余裕教室・敷地を活用しているケースが多い。地域の状況に応じて様々な施設が利活用されている。
山梨県における学年別登録児童数は、国庫補助の対象が概ね10歳未満であること、一・二年生の受け入れが市町村の人口政策として有効(社会増加率を高める)であること等から、一年生44%、二年生34%、三年生20%と低学年が97%を占めている。また、四年生以上の需要があることも事実であるが、果たして市町村はどこまで受け入れていく必要があるのか。
現下、地方財政は毎年14兆円の財源不足を生じる等危機的状況にあるため、地方交付税における段階補正・事業費補正が見直され、国庫補助負担金の縮減が実施されている。今後、市町村においては、地域の実情に応じて「最小の経費で最大の効果をあげ」(地方自治法第2条第14項)る行財政運営が求められてくる。多様化する行政ニーズに全て対応していくことは不可能であるため、市町村は、各々のおかれている状況の中で、自らの責任において、どこまで応えていく必要があるのか、どこまでを行政が担っていくのか、本当に必要なサービスであるのかといった判断が迫られてくる。

 地方財政支出はハードからソフトへ移行しつつある。かつてのハコモノ行政が、過大なサービス行政にならぬよう首長を中心とした市町村職員の役割は重大である。放課後児童クラブの取り組み方からも、その手腕を推し量ることができるのかもしれない。期待したいところである。

no146-1

(山梨総合研究所 研究員 赤尾 好彦)