停電防止へ消費者も協力を
毎日新聞No.150 【平成15年 4月15日発行】
~原発停止点検による電力不足懸念~
去年発覚した電力会社各社の原子力発電所の問題は、電力業界のみならず国民に対しても大きな波紋を投げかけた。定期点検および補修作業において発見された炉内隔壁(シュラウド)などの点検・修理記録等において虚偽の記載や事実の隠ぺいがあったというものである。
日本の電気の3割以上が原子力発電で賄われており、県を含む首都圏を供給エリアに持つ東京電力は4割以上を原子力発電に頼っている。資源の少ない日本にとって、原子力は準国産エネルギーとして重要な位置を占めており、非常に手痛い事態となった。安全性が最優先される原子力発電だけに、国は、罰則強化や維持基準導入など再発防止策を盛り込んだ改正電気事業法や改正原子炉等規制法を制定。今年の10月に全面施行の予定である。
一方、一連の問題が最初に見つかった東京電力では、原子力発電所における不適正な取り扱いなどの再発防止対策を3月に発表。発電所運営の透明性の向上、業務運営支援機能の強化、風通しのよい企業風土の構築、企業倫理遵守の徹底という4つの約束を掲げ、失われた信頼の回復に全力を注いでいる。
当面の問題として考えられるのは、一連の問題に伴う原子力発電の停止点検作業により、電気が足りなくなる事態が発生する可能性がある、ということである。東京電力では、原子力発電17基のうち3月末現在で16基が停止点検作業をしており、4月には残る1基も停止点検作業を行う。そのため全ての原子力発電がストップする状態となる。東京電力管内における夏場の電力ピークは約6,450万kwと予想。東京電力の原子力発電の総発電能力1,730万kwが全て停止状態のままで夏場のピークを迎えると、約950万kwの電力不足となると試算される。冬場の電力は、他電力会社からの融通電力や停止中の火力発電の運転再開、消費者への節電の呼びかけなどで乗り切ったものの、約950万kwの電力は、その場しのぎの対策ではどうにもならない規模である。
原子力発電の運転再開の論議がなされているが、そのためには原子力発電所が立地している地域の住民および自治体の理解が得られるよう、電力会社は信頼回復に向けて必死の努力を積み重ねる必要がある。仮に、原子力発電が稼動できない場合は、米国カルフォルニア州のような輪番停電と呼ばれる計画的な停電措置を行うケースも想定できる。この夏を停電無しに乗り切るためには、電力会社による再発防止に向けての一層の努力は当然のこととして、消費者の理解と協力も必要になってくる。
(山梨総合研究所 研究員 岡田 実)