消防団


毎日新聞No.153 【平成15年 6月 3日発行】

~「非常備」を見直そう~

 徳川吉宗が設置した町火消「いろは四八組」は、その後「消防組」「警防団」と変遷し、1948年の消防組織法施行に伴い現在の消防団制度が確立された。

 全国ほとんどの市町村に消防団が設置され、現在94万人の団員が加入している。
 団員は、職場や学校に勤めながら、非常時において防災活動に当る特別職の地方公務員であり、わずかな手当てが支給されてはいるものの、実体はボランティアとして活動している。主な活動は、火災発生時の出動、住民に対する消火作業の指導及び火災予防の啓発活動など、各種災害から地域住民の生命・身体・財産を守るという大変重要な任務である。地域行事の支援なども行っており、地域になくてはならない存在となっている。
 ところが、消防団を取り巻く環境が変わりつつある。若年層の域外流出に伴う団員の減少・高齢化や団員のサラリーマン化である。
 現在、市町村は団員数の減少に伴い、「非常備」消防団を縮少し、消防署や広域消防本部といった「常備」消防組織にその役割を担わせようとしている。しかし、2001年度の全国消防団員の火災等への出動延べ人員は514万人に上っており、こうした出動を常備消防が担っていくことになると、一市町村で年間数億円規模の経費が必要になってくる。
 2002年、消防庁に設置された「新時代に即した消防団のあり方に関する検討委員会」は、サラリーマンが団員として活動できるよう支援する事業所に対して、行政が何らかのインセンティブ(達成報奨)を与えることや、公務員が団員になることを促進していく取り組みを提言している。若者の消防団離れを食い止め、団員の確保が容易になることから提言の実現が期待される。

 地方財政が危機的状況にあるなかで、消防団の役割はますます重要になってくる。地域に消防団が存在し、若年層の団員を確保することは、地域防災活動だけでなく、地域活性化に貢献し、行財政の効率化にもつながる得策である。もう一度消防団の役割を見直していく必要がある。

(山梨総合研究所 研究員 赤尾好彦)