水道事業
毎日新聞No.154 【平成15年 6月17日発行】
~ 供給態勢の再考を~
これから夏に向け、渇いたのどを潤すために水道水を口にする機会が増える。おいしい水の条件としては、水温10~15度で、味を良くするカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムといったミネラル分が適度に含まれており、新鮮さとさわやかさを与える二酸化炭素が十分に溶けていることなどが挙げられる。今、このおいしい水を供給する水道が自治体の財政運営の課題としてクローズアップされている。
そもそも水道事業は、地方公営企業のひとつで自治体の一般会計とは違い、水道使用者から水道水の使用量に応じて支払われる水道料金によって民間会社のような仕組みで経営されている。しかし、民間会社と違う点が公共性である。民間会社は経済性を重視し、採算のとれない生産や利益の上がらない仕事を減らすが、地方公営企業である水道事業は「公共の福祉を増進する」という自治体の行政サービスを行う義務がある。採算のとれない区域への給水を停止するとか、収益が上がらないからといって水道水の質を下げることはない。常に安全、かつ安定した水道水の供給に努めている。
しかしながら、国内の水道事業の約6割が昭和30~40年代に供用を開始しており、施設の大量更新期を迎えつつある。国内の水道事業の約3分の2は給水人口3万人未満の小規模事業である。その一方で今後、全国的に人口減少が続くと予想されることや節水型社会への移行による収入減少が見込まれる。各自治体は水道事業の広域化、人員の削減や民間委託の導入による人件費の縮減、各種経費の節減などさまざまなコスト削減を図る経営努力をしているが、近年、より安全で良質な水が求められるようになり、水質基準強化に対応した新たな施設整備なども必要になってきた。こうした状況下で水道事業の経営は厳しくなっていくであろう。県下の多くの自治体においても、水道施設の更新を検討している。中・長期の視点から需給動向を捉えつつ、誰にとっても必要不可欠な水道水の供給態勢について水道使用者である住民とともに考える時期がきている。
(山梨総合研究所 主任研究員 新井 純)