在宅高齢者への支援


毎日新聞No.159 【平成15年9月9日発行】

望まれる防災の視点

 先日、ホームヘルパーの講習を終了し資格を取得したという方に、どのような内容の勉強をしたのかを聞いてみた。福祉の理念やケアサービスの意義から、福祉・介護・医療の知識、家事援助の方法、心理学、リハビリテーション、相談・援助技術に至るまでの幅広さであった。「人のケア」に携わるには多方面にわたる知識と技術の習得が必要なのだと改めて感じたが、これらの分野に加えて防災の知識も習得してほしいと思う。
 ヘルパーやケアマネジャーは、サービス利用者との契約に基づき、定期的に利用者の家庭を訪問している。利用者の中には高齢者や障害者だけの世帯も多く、近所に身内がなく年金収入のみで生活し、老朽化した家屋で暮らすことを余儀なくされている方々もいるであろう。こうした方々は、防災に対する情報不足となっていたり、自力では対策を講ずることができないでいる可能性が高い。

 防災の日を中心として行われる防災訓練においては、「自分たちを守るのは自分たち」との認識の元に行われる地域での訓練が増加してきた。災害弱者といわれる高齢者等の身近で援助業務を行うホームヘルパー、ケアマネジャーをはじめ、民生・児童委員、福祉・保健・介護・生活等の相談員などの援助者が防災に関する知識を習得し、防災の視点を持ちつつ日頃の支援援助活動を行っていくことが必要ではないか。援助者が地震・火災などの防災の知識を身に付けて、防災の視点から高齢者等の生活習慣や住宅・家具などに改善すべき点が見受けられる場合には、本人や家族に助言し、必要に応じて消防機関等につなげていく連携・協力関係が築かれていれば、高齢者等は安心して日常生活を送ることができると思う。

 地域におけるこのような取組みが、大規模地震発生時の被害の軽減、被災時における新たな要介護者発生の抑制、災害復興のための財政支出の抑制につながるであろう。市町村は、地域防災計画の中で、援助業務に携わる者による高齢者等への防災支援を位置付け、地域ケア会議などを通して推進を図るべきである。

(山梨総合研究所 研究員 荻原 宗)