まちづくり計画の手順


毎日新聞No.167 【平成16年2月10日発行】

住民参加の第一歩

 路線バスに乗らなくなった。最後に乗ったのはいつだったか思い出すのに苦労するほどであるが、これは多くの人の実感だろう。なにしろ、県内で利用される交通機関のうち、路線バスの分担比率は5%にも満たない。

 路線バスを取り巻く問題の難しさは、不便だから乗らない、乗らないからなお不便に……という悪循環に陥っていることである。ニワトリとタマゴの例ではないが、どこから手をつけてよいのか分からない状態である。しかし、絡んだ糸をほぐす糸口は必ずある。要は展望と手順である。
 展望ははっきりしている。マイカーに依存し過ぎた社会を続けていくことはできない。環境を守るためにも、マイカーと公共交通機関の適切な分担を目指すことが不可欠である。
 より重要なのは手順である。悪循環を断ち切り路線バスなどの公共交通機関に客を呼び戻すために、どのような取り組みをどんな順番で行っていくのか、である。それを交通事業者はもちろん、行政や地域住民などが一緒になって考える機会がほしい。たとえば、交通事業の短期の収支改善対策と、新たな交通システムの整備を含む中長期的な社会資本整備策とに分けて考えていってもよいだろう。収支改善のためには多少の仕掛けが必要であるが、地域の知恵を総動員し、アイディアをひねり出すことは可能だろう。バスをきめ細かく走らせる代わりに、中心市街地からマイカーを排除するといった社会実験をすることも考えられる。

 このように、課題解決に向けた取り組みにはそれにふさわしい手順がある。さまざまな取り組みを並行して行えばよいというものではなく、できるところから行えばよいというものでもない。同じことは中心市街地の衰退への対応や過疎地域の振興対策などについても言える。多くのまちづくり計画において、手順を明確にしたうえでしっかりとした工程管理をしていく必要性が高まっている。それは「誰がやるのか」という問いかけを通じ、まちづくりへの住民参加を進めていくことにもつながっていく。

(山梨総合研究所 主任研究員 山本盛次)