フィルムコミッション
毎日新聞No.170 【平成16年3月23日発行】
地域活性化に向けて
映画界最大の祭典である米アカデミー賞で、今年日本旋風が巻き起こった。「ラストサムライ」に出演した渡辺謙が助演男優賞に、山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」が外国語映画賞にノミネートされた。どちらもアカデミー賞受賞とはならなかったが、日本映画界に大きな歴史を刻んだといえよう。
渡辺謙が出演した「ラストサムライ」はハリウッド映画であるが、撮影の一部は兵庫県姫路市で行われた。日本で撮影される外国映画は増えてきており、最近では、「キル・ビル」や「ロスト・イン・トランスレーション」は東京でロケされた作品である。外国映画の日本ロケが増えた背景には、各地でフィルムコミッションが設立され、ロケがやりやすくなったということがある。フィルムコミッションとは、映画、テレビドラマ、CMなどのロケを誘致したり、実際のロケをスムーズに進めるためのサポートを行う非営利な公的機関のことである。「ラストサムライ」が撮影された姫路市にもフィルムコミッションがあり、ロケに対して様々なサポートができる体制となっている。
2000年に日本初のフィルムコミッションが大阪で設立され、2004年2月現在で61のフィルムコミッションが全国各地に存在している。フィルムコミッションは非営利な公的機関であるため、その活動が直接利益を産むわけではないが、実際にロケが行われれば、撮影隊が地域に落とす宿泊費や飲食費など、相応の直接的な経済効果が見込める。それにも増して大きな効果としては、自らの地域を映像という媒体を通して宣伝でき、その宣伝効果によって地域を訪れる観光客が増加するなどの間接的な経済効果が見込めるということである。
フィルムコミッションを設立することが地域活性化の処方箋のように取り扱われることもあるが、その活動は直接的に地域の経済を潤すものではないため、その設立をきっかけとして、観光業を中心とする地域の産業を盛り上げていくことが重要である。
(山梨総合研究所 研究員 岡田実)