人気の田舎暮らし
毎日新聞No.171 【平成16年4月13日発行】
受け入れ体制の整備を
ここ数年「田舎暮らし」というライフスタイルが人気を呼んでいる。都会の人々が農山漁村などの自然豊かな田舎で暮らすスタイルのことであるが、移り住む人が田舎に何を求めているかによって暮らし方は多種多様である。都会での生活を癒すために美しい山々などの自然景観と広い土地を求めて来る人や農林業などを営みたい人などが、住居を購入または借りて、都会に通って働いたり、地元で仕事を見つけたりとさまざまである。特に、最近では農業や家庭菜園をする「田舎暮らし」が人気である。これから数年後には団塊の世代が定年を迎え、第二の人生を送る舞台を田舎に求める人も大勢いると見られ、このブームはしばらく続くと思われる。
農山村では、過疎化や耕作放棄地の対策として、こうしたニーズに積極的に応えようとする動きが強まっている。都会の人に移住してもらうためには、住居を確保しなければならないが、借家の家賃補助を行っている市町村は全国に多い。農業希望者には農地も必要であるが、農地法による規制が障害となるケースが多く、これを緩和するため構造改革特区になっている地域も見られる。また、民間でも、インターネットや情報誌を使って情報を発信している。しかし、求めている住居や農地が見つからないなど都会人のニーズと農村を結びつける仕組みは必ずしも十分とはいえず、移住をあきらめる人も多い。
田舎暮らしの受け入れを促進することは地域活性化の刺激剤にもなり、新たな地域づくりの展開が期待できる。山梨は、豊かな自然景観をもつ田舎が多く、東京から二時間余りの距離にあるので、さまざまな「田舎暮らし」のニーズに応えられる。また、健康で長く生きられる健康長寿県日本一というデータも出ている。既に、峡北地域などの風光明媚な田舎に多くの都会人が移住しているが、山梨で暮らす魅力を発信したり、農業に対するニーズに対応できる受け入れ体制を整備するなど、工夫次第でもっと多くの人を呼び込めることが可能である。
(山梨総合研究所 主任研究員 一條卓)